ピアノやフルートの楽譜を、サックスで演奏しても、違う音で演奏されてしまいます。
正しい音で演奏するためには「移調」と呼ばれる、楽譜の読み替え・書き換えが必要となるからです。
今回は、この移調の具体的なやり方について解説していきます。
女性奏者
楽譜の書き換え…何だかとっても難しそう。
ピアノの曲を演奏するのは、諦めようかしら…
大丈夫!ルールを理解すれば誰でもできる。
この概念を理解できれば、楽器を演奏するときにも役立つ知識になる!
- 「移調楽器」という言葉は聞いたことあるけど、意味がわからない。
- 色々な楽器の曲を演奏したい。
- 手っ取り早く移調楽譜を作成したい。
私バージェスの、サックスの移調に関する考えはこちら!
ルールを覚えれば、誰でも出来るようになる
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最短で移調するなら「PlayScore2」と楽譜作成ソフトを併用
「難しそう…」と感じてしまうのは、仕方のないことかもしれません。
覚えなければならないこともありますが、理解できれば、より楽譜を読む力が身につきます!
丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
1.前提知識
移調を行う前に、前提として理解してほしい用語を解説していきます。
これから解説する内容は、移調に限らず、知っていると楽譜を読む上で、役に立つ知識です。
例えば、指揮者の先生によっては、「この程度の知識は知ってて当然」と考え、解説しないで合奏を進める可能性があります。
1-1.C譜・E♭譜・B♭譜
アルト・バリトンサックスはE♭管、ソプラノ・テナーサックスはB♭管というのは聞いたことがあると思います。
○○管という呼び方は、楽譜に書かれた「ド」の音を演奏すると、実際には何の音が鳴るのかを表します。
次の音を、チューナーを見ながら、サックスで演奏してみましょう。
アルト・バリトンサックスの場合、チューナーは「E♭」を、ソプラノ・テナーサックスの場合、チューナーは「B♭」を指します。
E♭管のために書かれた楽譜が「E♭譜」、B♭管のために書かれた楽譜が「B♭譜」となります。
C譜 | ピアノ・フルート・オーボエ・ヴァイオリンなど |
E♭譜 | アルトサックス・バリトンサックスなど |
B♭譜 | ソプラノサックス・テナーサックス・B♭クラリネット・バスクラリネット・トランペットなど |
F譜 | ホルンなど |
自分の楽器と同じ高さで書かれた楽譜を使用していないと、「移調」の作業が必要になる。
1-2.度数
音と音の距離を“度数”と言います。
ド〜レは2度、ミ〜ソは3度…のように数えます。
ドレミファソラシドで何個動いたか数えるだけです。
度数を数えるだけの場合、♯や♭は考えません。
1-3.調号
調号とは、ト音記号やヘ音記号の前についている#や♭のことです。
調号がある箇所については、全ての音に#や♭がつきます。
次の譜例の場合、ファの位置に#がついているので、全てのファの音に#がつきます。
調号の#や♭がつく位置は、適当でなくルールがあります。
例えば、#が2つの調号の場合、#は「ファ」と「ド」につきます。例外はありません。
以下に、調号がつく順番のルールをまとめました。
調号のつく順番は、覚えてしまうのがオススメ。
どこに調号がつくか把握しておけば、楽譜を読むのが速くなるぞ。
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2.実音を覚えてしまう
難しい理論を考えないで、「実音を覚えきってしまう」という考え方もあります。
覚えることが多いので、気合いが必要にはなりますが…
2-1.実音を覚えるやり方がオススメの人
こんな方にはオススメできます。
- 指揮を振ることがある
- E♭管もB♭管も両方とも演奏する
指揮者は、スコア(総譜)といって、全てのパートが書かれた楽譜を見ながら指揮を振ります。
スコアは一般的に、全パートそれぞれの楽器の楽譜で書かれていますので、様々な調性に対応しなければなりません。
また、サックス吹きでもC譜を読めるようになるメリットはあります。
- キーの名称は、C譜の読み方が採用されている。
- 教本によっては、C譜の読み方で書かれている。
E♭管もB♭管も演奏する方にとっては、C譜も覚えてしまった方が早いとも言えます。
2-2.移調の方法
実音は次の通りです。これを覚えて、読み替えます。
記譜 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
C譜 | C | D | E | F | G | A | H |
E♭譜 | E♭ | F | G | A♭ | B♭ | C | D |
B♭譜 | B♭ | C | D | E♭ | F | G | A |
記譜 | ド# | レ# | ミ# | ファ# | ソ# | ラ# | シ# |
C譜 | C# | D# | E# | F# | G# | A# | H# |
E♭譜 | E | F# | G# | A | H | C# | D# |
B♭譜 | H | C# | D# | E | F# | G# | A# |
記譜 | ド♭ | レ♭ | ミ♭ | ファ♭ | ソ♭ | ラ♭ | シ♭ |
C譜 | C♭ | D♭ | E♭ | F♭ | G♭ | A♭ | B♭ |
E♭譜 | E𝄫 | F♭ | G♭ | A𝄫 | B𝄫 | C♭ | D♭ |
B♭譜 | B𝄫 | C♭ | D♭ | E𝄫 | F♭ | G♭ | A♭ |
実際の読み替えは、次のように行います。
フルートの楽譜(C譜)をアルトサックス(E♭管)で演奏しようとした場合
- 初めの「ド」の音は、フルートで実音は「C」の音
- アルトサックスで「C」は、「ラ」の音と読み替え
これを繰り返します。
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3.度数と調号で考える
別の移調のやり方を解説します。
こちらはルールだけ覚えてしまえば、どんなケースにも応用できます。
3-1.(手順①)度数を変える
まずは楽譜の度数を変えます。
何度変えるかは、以下の表の通りです。
C譜→E♭譜 | 6度上げる or 3度下げる |
C譜→B♭譜 | 2度上げる or 7度下げる |
E♭譜→B♭譜 | 4度上げる or 5度下げる |
B♭譜→E♭譜 | 5度上げる or 4度下げる |
C譜からE♭譜に書き換える場合、次のようになります。
(譜例は3度下げるパターン)
まず全ての音を、そのまま3度下げます。
3-2.(手順②)調号を変える
度数を変更した後は、調号の数を変更します。
こちらにも一定のルールがあります。
C譜→E♭譜 | #を3つ増やす(♭を3つ減らす) |
C譜→B♭譜 | #を2つ増やす(♭を2つ減らす) |
E♭譜→B♭譜 | ♭を1つ増やす(#を1つ減らす) |
B♭譜→E♭譜 | #を1つ増やす(♭を1つ減らす) |
前述した通り、#や♭の数にはルールがあります。
難しい場合は、調号のルールまで戻って読んでみてください。
先ほど使用した例で行います。
#を3個増やすと、0個→3個となります。
#が3個つく場合は、ファ・ド・ソの3音につきます。
移調は基本的に、「度数を変える」・「調号を変える」の2つの工程で行う。
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4.【1番簡単に】移調楽譜を作成する方法
楽譜をスキャンしデータ化、楽譜作成ソフトで移調するのが1番速く・正確に仕上がります。
ここでは私が使用しているソフトも併せて、具体的に紹介していきます。
4-1.PlayScore2で紙の楽譜をスキャンし、データ化
スマホアプリのPlayScore2をダウンロードします。
https://apps.apple.com/us/app/playscore-2/id1449591118?l=ja
PlayScore2上で移調したい楽譜の写真を撮り、MusicXMLファイルとして保存します。
MusicXMLファイルを作成するには、PlayScore2のサブスク契約が必要となります。
お金はかかるが、圧倒的に作業時間が減るので価値のあるサービス!
4-2.楽譜作成ソフトでMusicXMLファイルを取り込み→内容確認
楽譜作成ソフトを使いMusicXMLファイルを取り込むと、楽譜の形でファイル上に表示されます。
このタイミングで、移調したい楽譜と内容が整合しているか確認します。95%以上は音ミスがありませんが、ダイナミクスや記号などは落ちているケースが多い印象です。
1から楽譜を手打ちするより、修正箇所を適宜直していく方が、圧倒的に速く作成できます。
自分の場合、楽譜作成ソフトは無料版のMuseScoreを使用しています。
4-3.楽譜作成ソフトで移調する
楽譜作成ソフトに入った移調機能を使えば、簡単に移調することができます。
移調する際には、何度変更するか選ぶ必要がありますので、次の表を参考にしてください。
C譜→E♭譜 | 長6度上げる or 短3度下げる |
C譜→B♭譜 | 長2度上げる or 短7度下げる |
E♭譜→B♭譜 | 完全4度上げる or 完全5度下げる |
B♭譜→E♭譜 | 完全5度上げる or 完全4度下げる |
このやり方は、ソフトの使い方さえ覚えれば、簡単で、便利でもある。
しかし、移調の仕組みは理解して、ソフトを使わなくてもできるようにはしておこう。
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5.移調をして演奏するのにおすすめの楽曲
市販の楽曲はアルトサックスで発売されていることがほとんどです。
アルトの需要が多いため仕方がない部分はあるのですが、B♭管のサックスをメインで演奏される方のために、いくつかおすすめの曲を紹介します。
5-1.ガブリエルのオーボエ(モリコーネ)
原曲はオーボエですので、ソプラノサックスが非常にマッチするのですが、アルトサックス用の楽譜しか販売されていませんでした。
こちらの楽譜に掲載されています。
ソプラノサックスで演奏するとこのようになります。
5-2.スペイン(チック=コリア)
世界的なサクソフォニストである須川展也氏が、ソプラノサックスで演奏し人気のナンバーですが、ソプラノ用の楽譜は販売されていません。
音域的にもフルートの楽譜を移調すると、非常に吹きやすくなります。
5-3.人生のメリーゴーランド
ジブリ映画「ハウルの動く城」から人生のメリーゴーランドです。
この楽曲はテナーの低い音域を使うことで、より魅力的な楽曲に仕上がります。
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6.(番外編)バリトンサックス(E♭管)でチェロの楽譜を演奏する
ここからは番外編です。
チェロの楽譜(ヘ音記号・C譜)は、E♭管では大変演奏しやすいです。
次の曲は、チェロの曲で超有名な、J.S.バッハ作曲の「無伴奏チェロ組曲第1番」の冒頭部分です。
1段目がチェロの楽譜、2段目がE♭譜に移調した楽譜です。
見た目の度数の変更が必要ないことがわかります。
これは、次のような理由です。
- ヘ音記号は、ト音記号より見た目上、3度下に書かれる。(下の譜例のように、ト音記号のラの位置にある音を、ドと読む)
- C譜→E♭譜の読み替えは、3度下げる必要がある。
どちらもト音記号のC譜から見ると、3度下がっているように見えます。
調号はルール通り、C譜→E♭譜なので、#を3つ増やしています。
バリトンサックスのために書かれた曲は、残念ながら少ないので、この方法で演奏する曲を増やすのは超オススメ。
チェロは名曲が無数にあるし、バリトンサックスと音域が近い。(最低音が同じ音)
サックス以外の曲も、名曲がたくさんあります。
今回の記事で、移調をマスターし、様々な楽器の曲にチャレンジしてもらえれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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