サックスのアンサンブルコンテストにオススメの曲を紹介していきます。
曲名だけではなく、難易度や演奏ポイント等も紹介していきます。
近年、アンサンブルコンテスト全国大会で演奏されたものは、曲名の後にその旨を表記します。また、フラジオがある場合お知らせします。
他の方の評判や、実際にアンコンで演奏されているかも調べてはいますが、私自身が演奏したことのある曲から、選んでいます。
実際に演奏した生の声をお伝えしていきますので、ぜひ最後までお読みください。
1.四重奏・カルテットの有名曲
まずはサックスアンサンブルの王道、四重奏曲から難易度順に紹介していきます。
1-1.初心者向け(四重奏)
サックスアンサンブルは高難易度な曲も多いですが、中学生からでもチャレンジできる曲を集めました。
アンコンだけでなく、小さなコンサートなどにも使いやすい選曲です。
彼方の光(村松崇継/浅利真編曲)
音数も少なく、サックスを始めたばかりのメンバーであっても、演奏しやすい難易度の曲です。テレビドラマでも採用された、親しみやすいメロディーが特徴です。
原曲はボーイソプラノ(少年合唱)です。ボーイソプラノ特有の透き通った響きで演奏できると、曲の雰囲気に非常にマッチします。決してギラギラした音色にならないように。
バリトンサックスは、終始ベースラインですが、歌心をもって演奏しないと、曲が停滞してしまうので、意識して演奏しましょう。
生命の奇跡(村松崇継/浅利真編曲)
こちらも「彼方の光」と同様に、ボーイソプラノが原曲の作品です。基本的には、彼方の光と同じようなイメージで曲つくりをしていけばOKです。
彼方の光よりは、幅広く音域を使うので難易度は高めですが、初心者であってもチャレンジできる難易度です。(ソプラノの低音域での伴奏が若干難しいです。)
中盤はアグレッシブに演奏できる箇所があるので、盛り上がりを見せれる部分もあります。
演奏会用アレグロ(サンジュレー)
サンジュレーは数多くのサックス作品を残している作曲家で、「サクソフォン四重奏曲」は歴史的な名曲です。
しかし、サンジュレーのサクソフォン四重奏曲は、演奏時間が15分を超え、アンコンには向いていません。
本作「演奏会用アレグロ」は、名曲「サクソフォン四重奏」をサンジュレー自身が再構成し、5分以内で演奏できるようにした作品です。
曲調は全体的に穏やかで、難しい音域もほとんど登場しません。
この曲の1番上のパートは、ソプラノ・アルトどちらでも演奏可能となっています。そのため、ソプラノがない団体でも演奏することができます。
原曲となっているサンジュレーの「サクソフォン四重奏」はこちらの楽譜です。
1857年に作曲された、最初のサックス四重奏曲と言われています。
最古の曲ではありますが、今でも演奏機会の多い、親しまれている曲です。
※こちらの「サクソフォン四重奏曲」は、ソプラノが必須なので注意してください。
1-2.中級者向け(四重奏)
中級者向けの楽曲は多く、選曲は悩ましいところです。
その中でもサックス奏者であれば1度は取り組んでほしい、長く親しまれている楽曲について紹介します。
異教徒の踊り(ショルティーノ)
古くから親しまれているサックス四重奏の古典的名曲です。
緩-急-緩-急という構成で、歌や音色で見せる場面とテクニックを見せる場面がはっきりと分かれているのが特徴です。
ソプラノ・アルト・テナーはダブルタンギング(もしくは高速のシングルタンギング)が必要な箇所がありますので、選曲の際はご注意を!
テンポが遅い部分と速い部分は、息のスピードやタンギングの質を変えて、はっきりと吹き分けられるように工夫しましょう。
中間部にはアルトの美しいソロもありますので、高音域に自信のある団体は選曲候補として良いと思います。
最後の和音、ソプラノがオクターブ上げて高いソ(実音G)で演奏されている音源も有名ですが、楽譜上はそのような指示はなく真ん中のソで書かれています。(オプションの表記もありません。)
セビリア(アルベニス/ミュール編曲)
スペインの情緒あふれるメロディが特徴の曲です。
基本的には終始ソプラノサックスがリードし、中間部のカデンツソロも担当します。
エース級のソプラノサックスがいて、皆をぐいぐい引っ張っていけるような団体に向いている楽曲です。
演奏する際にはスペイン風の楽曲を色々聴いて、雰囲気を出せるように演奏を工夫しましょう。これはメロディだけでなく伴奏パートも含めた全員が、です。
華やかで親しみやすいメロディですので、アンコンというよりはコンサートのオープニングなどに良い曲かもしれません。
サクソフォーン・シンフォネット(ベネット)
サックス四重奏曲の中では珍しく、AATB(アルト2本・テナー・バリトン)の編成となっています。
普段は吹奏楽で活動をしていると、ソプラノサックスを使う機会がなく難易度も高いため、苦手意識をもっている方も多いのではないでしょうか?
序盤にゆったりとしたソロの掛け合いのある1stアルトとテナーの難易度が高めです。さらに中盤以降には早いパッセージのソロが1stアルトには書かれています。
2ndアルトは比較的難易度がおさえられているので、下級生や経験の浅い方もアンサンブルに入れたい場合に取り組みやすいです。
特にゆったりした箇所は、モダンJAZZのようなムードのある楽曲ですので、歌い方も工夫してみてください。
バーレスク(プラネル)【アンコン全国実績あり!】
楽譜は終始6/8拍子で書かれていますが、演奏は変拍子のように取り扱わなければならなく、アンサンブルが難しい楽曲です。
典型的な6/8、2拍子で演奏するだけではなく、3拍子・4拍子と様々な拍子が顔を見せます。
ポイントはアクセントの位置です。アクセントの位置から何拍子かのフレーズか読み取って演奏するようにしましょう。
スラーの頭の音も、広い意味ではアクセントとして取り扱います。(タンギングをした音の方がしない音よりも強く演奏するため。もちろん通常のアクセントよりは発音を優しく。)
指が回らないほど難しいパッセージはありませんが、正確に演奏しないとアンサンブルが乱れるので丁寧にさらい、時間をかけてアンサンブルを構築しましょう。
アンダンテとスケルツォ(ボザ)【アンコン全国実績あり!】
ゆったりしたメロディのアンダンテ、技巧的なパッセージのスケルツォの2部構成です。
冒頭はテナーの美しいソロから始まります。コンクールでは特に曲の頭の印象は賞を左右するので、テナー奏者にかかる負担は大きくなります。
また目立つ部分はありませんが、アルトのパートが地味に難易度が高いです。
アンダンテでは調号が多いので、慣れていないとハーモニーを整えるのに苦労すると思います。
またスケルツォでは、スタッカートのメロディが中心ですので、タンギングの質向上が必要となります。
4人全員の基礎力がないと取り組むのは難しいです。難易度は高めで、中級に入れようか上級に入れようか悩んだ曲です。
1-3.上級者向け(四重奏)
これから紹介する上級者向けの選曲は、どのパートも非常に難易度が高く自分のパートをさらうだけでも大変なうえ、アンサンブルも難しい曲が多いです。
準備期間と覚悟をもって取り組みましょう。
どれも名曲ですので、いつかは取り組んでほしい曲でもあります。
グラーヴェとプレスト(リヴィエ)【アンコン全国実績あり!】
ゆったりとしたテンポで怪しげな雰囲気を持つグラーヴェ、速いテンポで技巧的なパッセージの続くプレストの2部構成です。
上級で紹介する中では難易度は低い部類ですが、ソプラノ担当だけは非常に難易度が高い作品です。
ソプラノの指がどれだけ回るかによって、プレストのテンポが決まります。
音階で動く箇所も多いのでゆっくり練習している間は難しさに気が付かないかもしれません。しかし、なかなか思ったようなテンポまで上がらず苦戦すると思います。
ソプラノ以外のパートは簡単ではありませんが、そこまで難易度は高くありません。
ソプラノの大エースがいる団体は勝負してみても面白いと思います。
サックス四重奏の中では定番中の定番の作品でもあるので、ぜひいつかはチャレンジしてほしい楽曲でもあります。
サクソフォン四重奏曲(デザンクロ)【アンコン全国実績あり!】
サックス四重奏の中で、最も有名な曲といったらこの曲を選ぶ人も多いのではないでしょうか。
第3楽章はこの曲の代名詞と言えるほど特に有名な楽曲で、アンコンでも取り上げる団体が非常に多いです。
臨時記号も多く、全パート楽譜をなぞるだけでも非常に難しいうえ、アンサンブルを組み立てるのも非常に難しいため、最後の1音が終わるまで一瞬たりとも気が抜けません。
楽譜の指示を守り、曲を通しきるだけでも大変労力がかかる曲です。
この曲を通すだけでなく音楽的な表現まで組み立てることができれば、コンクールでも上位が取れるので、全国大会での演奏頻度が高いのもうなずけます。
全パートで高い技術と、膨大な練習時間がかかる楽曲であることを覚悟して選曲しましょう。
彗星「トルヴェールの≪惑星≫」より(長生淳)【アンコン全国実績あり!】
吹奏楽で人気の作曲家、長生淳氏が書いたサックス四重奏のオリジナル曲です。
今回紹介するカルテットの楽曲の中では、比較的新しい部類に入りますが、音楽的な充実度からよく演奏される曲です。
この曲も長生氏の曲らしく各声部が目まぐるしく動き、複雑に関係しあっているため、アンサンブルを構築するのが難しくなっています。
中間部のゆったりしたモデラートの箇所は、ソプラノが先導してアゴーギグ(テンポの揺れ)を使って効果的に演奏しましょう。
最難関は終盤のバリトンサックスです。他の3声部が表拍で動く箇所を1人裏拍で動きます。アンサンブルが乱れやすい箇所ですので要注意です。
アルトにだけフラジオのソ#(実音H)が登場します。
2.四重奏以外の有名曲(三重奏・五重奏・八重奏)
残念ながらサックスアンサンブルは四重奏が大多数を占めており、それ以外の編成は圧倒的に数が少ないです。
なるべく四重奏で取り組むべきだとは考えますが、難しい事情もあると思います。
そこで四重奏以外の編成もピックアップして紹介します。
三重奏:ソナタ・ヘキサグラミック(日景貴文)【アンコン全国実績あり!】
2019年度吹奏楽コンクール課題曲を書かれた、日景貴文氏のオリジナル作品です。編成はATB(アルト・テナー・バリトン)。
三重奏と少ない編成ですが、クレッシェンドや休符を使って、音色を変化させながら迫力・切迫感を表現していきましょう。
中間部のゆったりしたテンポの部分は、ガラッと趣を変えて、サックスらしい柔らかい甘美な音で表現し、差がつくと面白い演奏ができると思います。
アルトの最後の音でフラジオのシ♭(実音D♭)が登場しますが、オプションでフラジオを使わないパターンも書かれているので心配ありません。
五重奏:さくらのうた~FIVE(福田洋介)
2012年度の吹奏楽コンクール課題曲に採用された作品を、作曲者自らがサックス5重奏に編曲した作品です編成はSAATB(ソプラノ・1st2ndアルト・テナー・バリトン)。
課題曲ではありますが、今でも吹奏楽のコンサートのレパートリーとして愛されている、美しいメロディをもつ楽曲です。
終始柔らかい音色での演奏するのが重要です。
柔らかい中であってもfの部分はサウンドに厚みをもたせ、少し情熱的に演奏できると抑揚がつきます。
タンギングやスタッカートも柔らかく発音できるよう、注意して演奏してください。
時折出てくるプラルトリラーも、息や発音でアクセントがつかないようにします。
なおソプラノにフラジオ音域がありますが、オプションで書かれていますので、演奏必須ではありません。
六重奏:ルーマニア民族舞曲(バルトーク/黒川恵一編曲)
もともとはピアノで演奏されていた曲ですが、オーケストラや吹奏楽など様々な編成で演奏され、愛されてきた1曲です。
サックスアンサンブルではSAATTB(ソプラノ・1st2ndアルト・1st2ndテナー・バリトン)の編成となっています。
2ndアルト・2ndテナーの演奏難易度をあえて下げて書いていますので、サックス歴の浅い方を交えて演奏するには良い選曲かもしれません。
演奏する際は、ピアノやオーケストラなど、普段関わることの少ない編成の演奏をよく聴いて曲のイメージをつかみましょう。
編曲を毛嫌いする方も一定数いますが、原曲に近い表現ができるよう学ぶことで、新たな演奏が見つかることもあります。
この曲に限らず、ぜひ積極的に編曲ものにもチャレンジしてみてください。
八重奏:サクソフォーン八重奏曲(長生淳)【アンコン全国実績あり!】
四重奏で紹介した彗星同様、長生氏のオリジナル作品となります。2楽章構成、編成はSSAATTBB(ソプラノ・アルト・テナー・バリトン各2)
1楽章が5分程度なのに対し、2楽章は8分程度あるため、アンコンでは1楽章を演奏するケースが多いです。
純粋な8重奏曲というよりは、カルテットが2組のために書かれた曲の構成となっています。
そのため個人でさらった後は、4人ずつで練習するのも効果的です。
レガート部分と細かいパッセージの部分は息のスピードを明確に変えましょう。
メロディはレガートでも伴奏が対比で細かいパッセージを担当していることもあります。自分のパートに合わせた息づかいを徹底してください。
メロディに対して伴奏の声部が多くなる箇所はバランスに注意してください。
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