サックスのオーバートーン練習は、「フラジオ奏法の入門」のような解説は多いですが、通常音域を向上させるメリットがあることまでは、あまり解説されていません。
オーバートーン練習は、フラジオ練習だけでなく、ロングトーンの応用版でもある。
サックスのオーバートーンの基本的な考え方から、解説されることの少ない音色改善の具体的な方法まで、譜例・参考演奏を交えて、詳しく解説していきます。
- サックスの倍音・オーバートーン練習を知らない
- サックスの音色・響きを良くしたい
- フラジオを出せるようにしたい・安定させたい
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全ての音域で、オーバートーンと同じ吹き方にする
私自身、全ての音をオーバートーンの吹き方にすることで、劇的に音色や響きが良くなりました。
皆さんにとっても、音色や響きを向上させるヒントがありますので、ぜひ最後までお読みください。
1.オーバートーン・倍音とは
まずは、オーバートーン・倍音の定義と、サックスでいうオーバートーン練習について、紹介していきます。
1-1.オーバートーン・倍音の定義
実際に鳴っている(聴こえている)音には、かすかにその音より高い音が鳴っています。
このかすかに鳴っている高音のことを、オーバートーン・倍音と呼びます。
可能であれば、グランドピアノの低音を、ペダルを踏んで弾いてみてください。
良く聴くと弾いた音よりも、高い音がいくつか聴こえます。
これがオーバートーン・倍音です。
1-2.サックスにおけるオーバートーン・倍音練習
サックスでのオーバートーン練習は、一般的に次のように行います。
アンブシュアや喉、息づかいを変えて、かすかに鳴っている倍音の方を強調して演奏する。
「高い倍音を強調する」点がフラジオ奏法と同じですので、フラジオ奏法の導入に、オーバートーン練習が採用されています。
下段が運指、上段が実際に出す音です。
運指はずっと固定です。アンブシュアや喉、息づかいを工夫して音の高さだけ変化させます。
実は、サックスの構造的に、第3倍音が1番出しやすいです。
まずは、第2・第4倍音まで出すのを目指してみましょう。
相当難しいので、根気強く取り組んでみてください。
ヒント
難しければ、次の指をプラスしてください。
- 第2倍音…オクターブキーを押す・3番キーを離す
- 第3倍音…オクターブキーを押す
- 第4倍音…E♭キーを押す
- 第5倍音…C1キーを押す
- 第6倍音…フロントキーを押す
※キー名称がわからない場合、こちらをクリック→サックスキー名称一覧
指を足して音が出たら、吹いたときの感覚や音程を覚えて、下のシ♭の運指に戻してみましょう。
次のように、下のシとドの運指でも練習してみましょう。
1-3.サックスでオーバートーンを出すコツ
オーバートーンを出すコツは、次の通りです。
- 口の中を狭くする
- 息は細く・入れ過ぎない
- 頭のてっぺんを響かせるイメージ
- マウスピースを噛む必要はない
私は「ク」というつもりで発音している。
これで口の中をかなり狭くできる。
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2.オーバートーンを使った音色改善
次に、オーバートーンを使った音色改善の練習について解説していきます。
2-1.音色改善のための練習メニュー
同じ音で、通常の運指と、オーバートーンの運指を交互に使って練習していきます。
オーバートーンの吹き方で、通常運指のときも演奏する。
キーの塞がる数が違うので、音程差は若干出てしまいますが、どちらの運指でも、音色・響きを統一するように練習していきます。
第2倍音
第2倍音(オクターブキー)
運指が変わるのが、オクターブキーだけの場合、音程も変化しません。
第3倍音
第4倍音
第5倍音
第5・第6倍音は、指もかなり難しくなります。
第6倍音
2-2.オーバートーン練習の効果
通常運指で演奏するときも、オーバートーンの演奏方法に合わせると、音色・響きが改善する理由を解説していきます。
楽器全体を使って鳴らせ、太い音が出る
オーバートーンを出す運指は、本来低音を出すための運指なので、ほとんどのキーを塞いだ状態になっています。
そのため、オーバートーンの吹き方で演奏すると、ベルの先まで息が通っていることになります。
つまり、通常の運指よりもオーバートーンを出す運指の方が、楽器をより鳴らせて、太い響きのある音が出ます。
オーバートーンの演奏法は、ベルの先端、楽器全体を使って鳴らすことができる。
より正しい演奏法になる
サックスは音が出しやすい楽器である反面、間違った奏法でも、簡単に音が出てしまいます。
しかし、オーバートーンは狙った音を出すこと自体が難しい。つまり「音を出すツボが圧倒的に小さい」ことになります。
通常運指では見つけにくい、「楽器が良く鳴るツボ」にピンポイントで息を当てないと、オーバートーンでは音が出ません。
例えば噛んでしまうとオーバートーンは出にくいので、アンブシュアの改善につながります。
オーバートーンは「楽器が良く鳴るツボ」にピンポイントで息を当てられる。
通常の運指では、砂漠の中から指輪(=正しい奏法)を探し出すようなもの。
でもオーバートーンは、音を出すこと自体難しいので、砂漠が砂場くらいにはなる。
音程が改善する
オーバートーンは、実際の運指と違う音を出す必要があるため、出そうとする音をイメージすることがより重要になります。
良くも悪くも、サックスは指を押さえてしまえば正しい音程の近くで演奏できてしまうため、音程をイメージすることを忘れがちです。
オーバートーン練習を通じて、音程をイメージする癖をつければ、音程も向上していきます。
正しい音程を出すために、喉が適切な形になっていくからです。
フラジオが出やすくなる
フラジオを自在に出せるようにする目的で、オーバートーン練習をするケースが1番多いのではないでしょうか?
確かにフラジオも「運指とは別の高い倍音を出す」という意味でオーバートーンの一種ですが、注意点があります。
オーバートーンもフラジオも噛んで無理やり出そうとしないこと
フラジオを含む高音域を出そうとするときに、噛んで無理やり出そうとしてしまう方は一定数いますが、これは誤りです。
噛んでしまうと、リードの振動が妨げられてしまって「太い響きのある音を出す」というオーバートーンのメリットが大きく失われてしまいます。
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3.オーバートーンを出すためのコツ
オーバートーンを出したい場合も、通常の高音域を出すコツと似た部分があります。
- 息の向きを上向きに
- 息のスピードを上げ、量を減らす
- 口の中を狭くする
オーバートーンやフラジオを出したい場合、これらのコツを極端にやることが重要です。
特に下顎を思い切り出して息を上向きにしたり、息の量を思い切り絞ると、オーバートーンが出やすくなります。研究してみてください。
オーバートーンが出たら響き方を覚え、徐々に通常の奏法と近づくようにしていきます。
【参考】オーバートーン練習のための教本
オーバートーンを学ぶには、ルソー氏が書いた教本がおすすめです。
フラジオを学ぶための教本ではありますが、オーバートーン練習も掲載されています。フラジオ・オーバートーンどちらを学ぶとしても、自信をもって推奨できる1冊です。
- ソプラノ~バリトンまで運指が、1つの音に対して多数掲載されている
- 簡単な内容から、徐々に学べる構成になっている
- オーバートーン練習も併せてできる
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まとめ
私自身の演奏を劇的に変えてくれた、倍音・オーバートーン練習について解説してきました。
- オーバートーン練習は、運指を変えずにアンブシュアや喉、息づかいを工夫して高音域を出す練習
- オーバートーンの吹き方で、通常運指のときも演奏する。
- 通常の運指と、オーバートーンの運指を交互に使って音色をそろえる練習が効果的
難しい技術なので、根気強く練習して行ってください。
個人的には、第4倍音を演奏するイメージの吹き方が、基本の奏法になっている。
リードやマウスピースの選定でも、倍音の具合はチェックしている。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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