サックスのソロコンテスト向けの曲を紹介していきます。
曲名だけではなく、演奏時間や難易度、難しいポイント等も紹介していきます。
今回はテナーサックス編です。テナーサックスはアルトサックスと比較して、曲数がかなり少ないため、選曲の相談を受けることも多いです。
中学生の方でも演奏できる曲から上級編まで、テナーサックスに絞って紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
他の方の評判や、実際にソロコンで演奏されているかも調べてはいますが、私自身が演奏したことのある曲から、選んでいます。
実際に演奏した生の感想をお伝えしていきますので、ぜひ最後までお読みください。
1.セレナード・ヴァリエ(クレリス作曲)
- 演奏時間…約3分
- 難易度…初級
- フラジオ…なし
最初にチャレンジするソロの曲として、オススメです。
終止ゆったりとしたテンポで、演奏しやすい音域で書かれています。
16分音符が並ぶ技巧的なフレーズもあり、楽器を始めて間もない方にとっては、練習しがいのある曲となります。
難しいのはタンギングです。穏やかな曲想に合うタンギングで演奏する必要があります。
舌でソフトにリードに触れるよう、意識してください。
また、音程が高くなりがちな、真ん中の「レ」や「ミ」が多用されているので、音程に注意です。
真ん中の「レ」と「ミ」の音程のコツはこちらにまとめています。
- ゆったりとした曲なので、柔らかいタンギングを意識して。
- オクターブの跳躍が多いので、綺麗にとれるように。
- 装飾音符に、アクセントがつかないよう注意。
演奏はこちらを参考にしてみてください。
2.アイナの歌(イナの歌)(スパーク作曲)
- 演奏時間…約5分
- 難易度…初級(〜中級)
- フラジオ…なし
もともとユーフォニアムとピアノのために書かれた曲ですが、テナーサックスの音域でも演奏可能です。
「B♭ EUPHONIUM」という楽譜をそのまま読むだけです。
オプションで1オクターブ上げる指示の箇所は、オクターブ上げて演奏しましょう。(上げないと、下の音域がサックスでは足りません)
この記事を書いている時点では、テナーサックスでの演奏は一般的ではないようですが、テナーサックスの音域に非常にマッチするので、オススメです。
全体を通して歌う曲なので、技術的にアピールする箇所がないのは難点です。
逆に言えば、中学生でも取り組みやすい曲です。
- 低い音からフレーズが始まることが多いので、はっきり出られるように練習する。
- 中間のカデンツの部分の、テンポ感や間の取り方は、たくさんの演奏を聴いて研究する。
アイナの歌は、テナーサックス用の音源は多くありません。私自身が演奏したものを載せますので、こちらを参照してください。練習しやすいように、練習番号ごとにチャプターで区切っています。
3.テナー・サクソフォンとピアノのための協奏曲 Op.57(サンジュレー作曲)
- 演奏時間…約5分
- 難易度…中級(~上級)
- フラジオ…なし
技巧的なパッセージが中心ですが、歌や音色を聴かせる箇所もあり、ソロコンにはもってこいの曲です。
長い休符が少ないため、演奏者の体力も試されます。
指回しは多いですが、パームキーを使う高音域(レから上)は、ほとんど使うことはありませんので、その点は少し楽です。
冒頭18小節の間に、サックスのパート譜には音がありますが、前奏としてピアノパートに任せてしまってもOKです。
- 速い動きの中にも、大きい跳躍があるので、柔軟なアンブシュアと息づかいは必須。
- 速い動きが明確に聴こえるように、息を吹き込む、指をテキパキ回す。
4.アダージョとアレグロ(シューマン作曲・須川展也編曲)
- 演奏時間…約8分(アダージョ:約3分半・アレグロ:約4分半)
- 難易度…中級
- フラジオ…あり(ソ♮・アダージョにのみ登場)
全曲通すと長いため、ソロコンの選曲という意味では、アレグロのみの演奏、もしくはアダージョとアレグロ、それぞれの部分をカットする形になります。
アレグロだけであっても、歌や音色で勝負できる箇所はあります。
曲全体を通して、低音域はあまり使われず、中〜高音域が中心の構成となっています。
- アレグロは短い音が多いので、こもった音にならないよう、息を吹き込む。
- 高音域も含め、随所に出てくるタンギングの質を重視。
演奏サンプルはこちらです。練習しやすいように、練習番号ごとにチャプターで区切っています。
5.ファンタジア(ヴィラ=ロボス作曲)
- 演奏時間…約10分(第1楽章:約4分・第2楽章:約3分・第3楽章:約3分)
- 難易度…中級(〜上級)
- フラジオ…なし
曲全体を通して、タンギングと拍子感をどのように表現するかが、大きなポイントとなります。
第1楽章は、3/2拍子・2/2拍子で表記されますが、場所によっては拍子が表記と違う場合があるので、注意してください。
技巧的なパッセージが中心ですが、歌えるメロディもあります。
第2楽章は、♩=54のゆったりとしたテンポですが、5連符・6連符・7連符・32分音符など、様々なリズムが登場します。
第3楽章では、♩=152のテンポで、16分音符のタンギングが登場しますので、ダブルタンギングが必須となります。
悩まれた場合は、第1楽章を選ぶのが良いです。
- スタッカートやアクセントなど、タンギングに差をつけて、表現する。
- 跳躍が全体的に多いので、どの音もきちんと鳴らせるように息を入れる。
(番外編①)サンジュレーという作曲家
ジャン=バティスト・サンジュレーという作曲家は、クラシックのサックスのための曲を多数書いた、サックスの歴史から見たら初期の作曲家です。
サンジュレーの書いた曲では、「サクソフォーン四重奏曲」が大変有名ですが、実はソロの曲も数十曲残しています。
サンジュレーが書いたソロ曲は、アルトサックス以外の曲も多い。
サックスでソロの曲というと、ほとんどがアルトサックスのために書かれた曲、というのが現状です。
そのため、アルトサックス以外のサックスでソロの曲を探すと、なかなか見つかりません。
サンジュレーの曲は、選曲の幅を広げるという意味でも非常に有用ですので、ぜひ色々探してみてください。
(番外編②)サックスのソロコンで選曲をするときの注意点
サックスのソロコンの選曲をするときに注意すべき点は、「ピアノ伴奏の難易度」です。
実は、サックスよりもピアノ伴奏の方が、はるかに難しいケースが多いです。
ピアノ伴奏をお願いする人と、必ず一緒に選曲をするようにしてください。
ピアノ伴奏は、完璧にできれば素晴らしいですが、「一部の音を抜く」ことも考えて演奏してみてください。
(プロのピアニストでも、曲によっては音を抜いています。)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。