3回にわたり「管楽器の呼吸法」について解説をしていきます。
男子学生
- 管楽器吹くのに”呼吸は大切”って言うけど具体的に何すればいいかわからない
- 腹式呼吸の取り組み方がわからない
- もっといい音で吹きたい、楽器を鳴らしたい
この悩みを解決するのに、私バージェスからの提案はこちら!
呼吸は「吸気主動(きゅうきしゅどう)」で行う
「吸気主動(きゅうきしゅどう)」、おそらく聞き慣れない言葉だと思います。
一言で表すなら、「息を吐く」ことよりも「息を吸う」ことを重要視する考え方です。
呼吸そのものは「腹式呼吸」で行います。(こちらの用語は多分おなじみですね。)
「吸気主動」に関しては、私が知る限りでは、難しい文献などに書かれている程度で、簡単に説明してあるものを見たことがありません。
この重要だけどなじみのない「吸気主動」について、私バージェスが簡単な言葉でていねいに説明していきます。
呼吸編、第1回では「呼吸の重要性」「腹式呼吸について」「吸気主動の概要」というメニューでお話しします。
「聞いたことのない”吸気主動”だけ知りたい」という方は、下の「本記事の内容」からとんでもらえればと思います。
呼吸法は、管楽器演奏の全ての基礎です。
タンギングやヴィブラートなど個別の奏法に悩んでる方でも、呼吸法を見直せば全てが上手くいく、といった話しも珍しくありません。
私も今回説明する呼吸法を使ってから、一気に上達のスピードが上がりましたし、そもそも楽器を演奏の仕方が大きく変わりました。
長丁場になると思いますが、今回は本当に本当に大切なテーマだと思っていますので、ぜひ最後まで読んでいただき、皆さんの演奏に活かしてもらえればうれしいです。
今回から説明する「吸気主動」は、自分にとっても演奏の根幹にある部分。
この呼吸法を使うことで、自分は一気に上達したし、演奏に対する考え方が劇的に変化しました。
1.呼吸の重要性
これらと比較して、「呼吸法」というのはどうしても地味に感じてしまうかもしれません。(事実、楽器を始めて間もない頃の私もそうでした。)
また、指回しのように練習をしていくと、どんどん速いテンポで演奏できるような目に見えた成果が見えにくいのも事実です。
しかし「呼吸」というものは、管楽器の演奏においてはとても重要です。
次のことを意識して、弦楽器奏者の演奏動画を見てみてください。
- 弓を動かす速さ
- 弓の使う位置(弓の先 or 真ん中 or 手元に近い部分)
- 弓を当てる弦の場所(楽器の中心に近い or 左手に近い)
- 弓の角度(弓を楽器に全部当てる or 少しだけ当てる)
管楽器奏者はこれら全てを呼吸、息だけで表現しなくてはならない
しかも弦楽器の弓使いのように、息は見えません。
非常に難しいですが、呼吸についてしっかり考え、取り組んでいく必要があります。
2.腹式呼吸について
腹式呼吸は、管楽器を演奏するうえで、最初に習うことの1つだと思います。
ここでは腹式呼吸の基本と今回のテーマである「吸気主動」を使うために、意識してほしいポイントについて解説していきたいと思います。
2-1.腹式呼吸の基本と練習方法
腹式呼吸は「息を吸うときにお腹が膨(ふく)らみ、吐くときにお腹がへこむ」呼吸法だと教わるかと思います。
簡単に腹式呼吸の感覚をつかむ方法は次の通りです。
- あおむけで寝ながら呼吸する
- 呼吸に合わせてお腹が動くことを確認する
- 立ったり座ったりした状態でも、寝た時のお腹の感覚で呼吸する
結構あっさりできる人もいれば、難しいという方もいるようです。(自分も苦労しながらやりました。)
また、お腹といってもへその下にある丹田(たんでん)を意識して呼吸するとなお良いです。
たまに誤解してる人がいるけど、腹式呼吸したからといって、お腹には息は入らない。
あくまで呼吸は肺(胸のあたり)で行われる。
2-2.腹式呼吸で特に意識しておいてほしいポイント
ここまでは、呼吸に関する一般的な話しでしたが、ここからが大切です。
腹式呼吸は別名、「横隔膜呼吸」とも呼ばれています。
前述したとおり、一般的に腹式呼吸は「息を吸うときにお腹がふくらみ、吐くときにお腹がへこむ」と教わります。
これ自体は間違えではないのですが、これから提唱する「吸気主動」をマスターするには、次の考え方を持ってください。
- 息を吸うときは「横隔膜が下がる」
- 息を吐くときは「横隔膜が上がる」
理科の授業で習いましたね。
イラストだと以下の通りです。肺は胸のあたりにあり、その下に横隔膜があります。
これから説明する「吸気主動」をマスターするには、次のポイントが大切です。
腹式呼吸をすることで、横隔膜が動いているという感覚をつかむ
2-3.腹式呼吸の誤解と注意点
腹式呼吸をした結果「お腹が膨(ふく)らむ」のであって、お腹を膨らませること自体に意識がいくのはNGです。
- お腹を膨らませようと思って、息を吸う
- お腹は膨らめば膨らむほど、良い呼吸ができていると考える
- 深く呼吸をした結果、お腹が膨らむ
- お腹を意図的に膨らませない、横隔膜が下がっていることだけを確認
意図的にお腹を膨らませようとすると、余分な力が入ってしまいます。
楽器演奏では、脱力が重要です。脱力の重要性については、こちらの記事で解説しています。
>楽器演奏・サックスが上達するために、見落としがちな1番大切なこと
3.吸気主動の概要
では、本日の本題である「吸気主動」について解説していきます。
3-1.そもそも吸気主動とは?
次の手順で呼吸をしてみてください。
- 腹式呼吸を使ってたくさん息を吸う
- 脱力する(息を吐こうとしない)
吸えていれば脱力するだけで(「息を吐こう」としなくても)「勝手に息が身体の外に出ていく」
①で息を吸うとき、たくさん吸えるほど(肺が息で満たされているほど)脱力したときに吐き出される息の量は多くなる
吸う行為に重点を置いて、吐く行為は「吐こう」としているわけではなくて脱力しているだけなのです。
だから吸気(空気を吸うこと)が主動(主な動き)となっているわけですね。
ですが、まだこのままだと息のコントロールがまったくできていないので、楽器演奏では使えません。
3-2.吸気主動を楽器演奏で使う
楽器演奏で吸気主動を使うと、次の手順になります。
- 腹式呼吸を使ってたくさん息を吸う
- アンブシュアを作って、息の出口を狭くする
- 脱力する+お腹(腹筋)を使って、息を吐きすぎないように我慢する(楽器を吹こうとしない)
吸気主動で楽器を演奏するにはまず、息の出口を狭くするためにアンブシュアを作る必要がある
サックスのアンブシュアについては、こちらの記事をご覧ください。
>サックスのアンブシュアについて全て解説〜クラシック・吹奏楽奏者向け
息の出口を狭くすると、圧力が高い、勢いのある息を出すことができます。
ホースの先をつまむと、水圧が高くなって、勢いよく水が出るのと同じ原理です。
また、脱力だけしてしまうとあっという間に息がなくなってしまうので、長い旋律を演奏ができません。(横隔膜はあっという間に上がりきってしまいます。)
息を吐きすぎないようにするためには、お腹(腹筋)で横隔膜が戻りきらない(上がりきらない)よう我慢する
「横隔膜が戻りきらない」ようにするには、腹式呼吸で息を吸ったときにふくらんだお腹を、息を吐いてもへこませないよう我慢することとほぼ同じです。
ただし、横隔膜が戻りきらない程度だけお腹を使えば十分です。
(この感覚が大切なので、腹式呼吸の項目で横隔膜の話しをしました。)
横隔膜の感覚を意識するために、楽器を使わないで練習してみるのも効果的です。
自分はサックスを「吹いている」という感覚はない。息は出ているけど、自分がやっていることは脱力しているだけだから。
ちなみに息がたくさん必要とされるバリトンサックスでも同じだぞ。
3-3.吸気主動で楽器演奏をするメリット
楽器を「吹こう」としてしまうと、どうしても息を吐くときに、口元に力が入ってしまいがちです。
吸気主動では、「吹こう」としないで、脱力しているだけです。
楽器の音を出している状態は脱力しているだけなので、呼吸が原因で口元に力が入ることがない
口元に力が入ってしまうと、タンギングやヴィブラートに悪影響が出てしまったり、柔軟なアンブシュアを作れなくなったりしてしまう
楽器を上達するうえで、最も大切な脱力については、こちらで解説しています。
>楽器演奏・サックスが上達するために、見落としがちな1番大切なこと
3-4.吸気主動の取り組み方
吸気主動ではとにかく「吸う」ことが大切
きちんと吸えていないと、脱力した時に吐く息がエネルギー不足になる
「吸う」力がないと、なかなか最初はうまくいかないと思います。
ですが、「きちんと吸えていれば、脱力すれば息は吐こうとしなくても勝手に出ていく」考えは頭に入れておいてほしいです。
100%吸気主動での息(脱力しただけで勝手に出る息)だけで楽器を吹くことは難しくても、今までの吹き方に吸気主動の息をプラスしてあげることは有効
自分から楽器を吹きにいく割合が減るので、口元に力は入りにくいです。
完全に吸気主動だけで楽器が吹けると、演奏が驚くほど楽になる。何時間吹いても、身体はほとんど疲れない。(頭は疲れるけど)
完全な吸気主動は難しいけど、まずは息をしっかり吸って、少しでも吸気主動が使えるようにしてほしい。
4.より深く呼吸法を学びたい方へ
より呼吸法を詳しく学びたい方は、こちらの書籍がオススメです。内容は難しいですが、非常に深い内容が書かれています。
まとめ
要点は、次の通りです。
- 管楽器の呼吸法は、弦楽器の弓づかいにあたり、非常に重要
- 腹式呼吸で横隔膜の動きを意識
- 吸気主動で演奏する
「管楽器の呼吸法」第2回は、こちらになります。
>管楽器の呼吸法 第2回~息は「吐く」より「吸う」のが大事 ブレスのコツ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
吹奏楽CDのレコーディング実績30枚以上・国際コンクール上位入賞実績のある私が、吹奏楽部・吹奏楽団の指導を行います。
私のレッスンの特徴は、演奏方法を「理論」で教えること。この理論を使い、私は音楽大学に行かずとも、国際コンクールの上位入賞を成し遂げました。
また演奏技術向上を目的としたこのホームページは、月間2万人以上の方が来訪いただいてます。あなたの吹奏楽団体の指導を私に任せてみませんか?
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