「管楽器の呼吸法」について解説、第2回となります。
私バージェスの考える管楽器の呼吸法で、大切なことは「吸気主動(きゅうきしゅどう)」という概念です。
「吸気主動」の概要については、こちらをぜひご覧になってください。本当に大切な考え方です。
>管楽器の呼吸法①~腹式呼吸の復習と「吸気主動」という新しい考え方
吸気主動の中で最も大切な「吸うこと」「ブレス」に特化したお話しを今回はしていきます。
私バージェスが考える、吸気主動で「吸う」ときに大切にしていることはこちらです。
肺の中を息で満たし、横隔膜が下がった状態をキープする
この結論を導くためには、「息を吸う」身体の動きについて正しく理解し、身体の中により多くの空気を入れる必要があります。
また、ただ呼吸の仕方を知るだけでなく、実際の演奏の中でどのように息を吸う(ブレスをとる)かも理解する必要があります。
女子学生
- 「息をもっとたくさん吸って、長いフレーズを演奏できるようにしたい」
- 「曲だと上手に息を吸うことができない」
このような悩みを解決します。ブレスの取り方1つで、演奏は大きく変わります。
だからこそ「息の吸い方」について改めて考えてみるきっかけとして、最後まで読んでみてください。
1.肺活量について考える
男子学生
- 「管楽器のプロの演奏家は、すごく肺活量があるんだろうな」
- 「肺活量鍛えるのに、腹筋と背筋を毎日やらなきゃ!」
こう考えている方も多いのではないでしょうか?
若き頃の私、バージェス少年もこう考えていましたし、実際に筋トレもやっていました…吹奏楽部で筋トレを練習メニューに入れているところもあると聞きます。
しかし、現実はプロの管楽器奏者でもそこまで肺活量が多いというのは聞きません。
管楽器の演奏で、息を維持するのに必要な技術は以下のとおりです。
- 息を上手に吸う
- 息をたくさん使わなくても良い音が出せる
ここから先は、「①息を上手に吸う」ことに関して、いくつか考えを述べていきます。
「②息をたくさん使わなくても良い音が出せる」に関しては、「管楽器の呼吸法 第3回」で、”息を吐く”ことにフォーカスしてお送りします。
肺活量は多い方がいいのは間違いない。
ただ演奏が上手な人で、肺活量にこだわっている人はあまり見かけない。「上手に吸う技術」「少ない息でもいい音を出す技術」を鍛えている人の方が多い。
筋肉量が一番多い人が、いろいろなスポーツで1番になれるわけではないという理由と同じだぞ。
ちなみにマラソンと水泳は、肺活量を上げるのに効果があるみたいです。健康にもいいので、やると一石二鳥ですね(^^)※楽器が上手くなりたいなら、その時間は練習にあてたほうが良いですが。
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2.息を上手に吸う
2-1.息を正しく吸う
肺・気管の仕組み
第1回の記事でも書いた通り、腹式呼吸であったとしても息は肺に入ります。
「腹式」という漢字が誤解を生んでしまっていますが、本来肺は胸にあるものです。
…とここまでは理解されている方もいるかな思います。
意外と知られていない、息を吸うために大切な「肺」と「気管」についての知識をお伝えします。
実は肺は前から見ると胸のあたりまでですが、背中から見ると腰の近くまである巨大な器官なんです。
ですので、お腹というよりは背中めがけて吸うイメージの方が、人体の仕組みから考えると正しいのです。
なので口から直接、背中めがけて息を吸うとむせる可能性がありますので注意してください。
肺や気管などの身体の仕組みを、正しくイメージして呼吸しよう。
息を吸うときのイメージ
第1回の記事でも書いた通り、吸気主動ではより多くの息で肺が満たされていることが大切です。
そのことにより、脱力したときに吐き出される息の量が増し、圧力も高くなるからです。
そこで次のようなイメージで、ブレスをとることをオススメします。
お腹回り360°全て空気で満たし、そのまま気管まで伸びる1本の太い円柱の柱のようなイメージでブレスをとる。
お腹だけに息を入れようとするより、はるかに肺が息で満たされるかと思います。
横隔膜が下がり切っていることもしっかり確認してください。
2-2.息の吸い方・実践編
いつも理想的な息の吸い方ができればいいのですが、実際の曲ではなかなか思った場所で、ブレスをとることが難しいです。
吸気主動の考えに基づきながら、実際に演奏するときに、私が考えている「息を吸い方」などを紹介します。
肺に空気を多く入れた状態(横隔膜が下がった状態)をキープすべし
おさらいにもなりますが、吸気主動の良い例と悪い例をあげます。
こちらが良い状態、吸気主動に基づいた楽器の演奏法です。
- たくさん吸うことで肺に息が満たされる(横隔膜がしっかり下がっている)
- 横隔膜がしっかり下がっている分、脱力することで、横隔膜が戻る力が強い
- たくさん息が吐ける、質の高い息となる
- この状態の息で、楽器には十分息が入る
- たくさん息を吸った後は脱力をしているだけで、力が入りようがない。柔軟なアンブシュアが作りやすく、口元で行うタンギングやヴィブラートもスムーズ
次にこちらが悪い状態、吸気主動が崩れた状態です。
- あまり吸うことができず、肺に息が満たされた状態でない(横隔膜の位置もほとんど変わっていない)
- 脱力してもほとんど横隔膜が動かない
- 息が外に出ていかない、質の悪い息となる
- 楽器に息を自分から入れようとしないと、息が足りないので楽器が鳴らない
- 息を入れようとすると口元に力が入ってしまいがち。柔軟なアンブシュアが作れなく、口元で行うタンギングやヴィブラートもぎこちない
①で息がきちんと吸えれば自然と「良い例」の状態に、息が吸えなかったら自然と「悪い例」の状態になるぞ。
この差は息を吸えたか、吸えてないかだけで決まる。息を吸えたか吸えてないかだけで、楽器演奏に大きな差が出ることを理解してほしい。
結局、息をしっかり吸い、肺にたくさん息が入った状態であることが、良い演奏につながるのです。
基本は、フルブレス(100%肺に息で満たされた状態)に近い息の量になるよう吸ったうえで、演奏し続ける。
ただしフルブレスと言っても、身体に力が入ってしまうまで吸う必要はありません。
フルブレスといっても脱力状態が優先。力が入らないギリギリまで、なるべくたくさん吸う。
フルブレスの状態をキープし続けると、疲労するので、長い休符ではいったん息は吐ききる
また、「深く吸う」ことは緊張対策としても有効です。
緊張しているときに呼吸に注目すると、普段はお腹の下まで吸えているはずが、胸のあたりで止まっていることが確認できます。
「深く吸う」以外にも、緊張対策はこちらにまとめています。ぜひお読みください。
>【即効性アリ!】すぐに実践、簡単にできる演奏会での3つの緊張対策
息をすばやく吸う
フルブレス状態で肺の状態をキープすることは大切ですが、曲によっては息を吸う時間が少なく、すばやく息を吸わなければならないという制約が出てきます。
その場合は次の呼吸を試してみてください。
- 息を吐ききってしまう(横隔膜が上がり切った状態)
- 口を開けて、脱力する
こうすると、脱力しただけで、横隔膜が自然と下がり、空気が取り込まれます。
横隔膜が自然と下がり、息が身体に入る力を利用して、少ない労力でブレスをとることができる
これは「吸いきって脱力する」吸気主動の逆の考え方になります。
この考え方も、吸気主動も、横隔膜は脱力すると、自然な位置に戻ろうとする性質を利用したものです。
また、息をすばやく吸うために、次の方法もあります。
肺の中の息の量を80~90%にしておいて、100%(フルブレス)に戻すための小さなブレスを回数多くとる
この吸い方だと、横隔膜が戻ろうとする性質は使えませんが、吸う息の量は少ないので短い時間でブレスが取れますし、常にフルブレスに近い状態で演奏することができます。
曲の中で息をすばやく吸うことは非常に難しいですが、これらの考え方が皆さんの演奏のヒントとなればうれしく思います。
基本的には、「息は使う量だけ吸えている」でオッケー。「1度にたくさん息を吸わなければいけない」という固定概念を持っている人は多い。
ただし、ずっと説明してきたとおり、「肺に息が満たされ、横隔膜が下がった状態」で演奏するので、吸った後がフルブレスに近い状態になるよう練習しよう。
ただし、すばやく吸うときには次のポイントに注意してください。
すばやく吸うことだけを意識しすぎて、息を吸う音が大きくなる。
これは音楽的に不自然なのでやめましょう。本来、ブレスはアンブシュアをなるべく維持したまま、楽器の外から空気を取り込みます。
しかし、息を吸うとき楽器の中を経由してブレスをとっている人も見かけます。これはノイズ(雑音)が入る原因になるのでやめましょう。
例外として、音量がfやffのときで、フレーズとフレーズの間が短く、勢いよく吸った方がよい部分もあります。ですが基本的には静かに、たくさん吸うことが大切です。
これも1つの技術だと思って、意識するようにしてください。静かにブレスをとることだけなら、意識すれば必ずできます。
力まずに吸う
「息を吸う」という行為は、本来は力が入ってしまう行動です。(反対に「息を吐く」行為はリラックスして行えます。)
(楽器を持たずに)たくさん息を吸おうとすると、両肩を後ろに引き、背中をそるような動きが自然。→これでは力が入ってしまう。
楽器演奏は脱力が大切なので、演奏前のブレスもなるべく脱力した状態で行うべきです。そのため、息を吸いながら、息を吐くときの動作を心がけます。
息を吸うときの動きとは逆に、肩を前に出し、軽く猫背になり、小さく縮こまるような動作をとる。
特に、ブレス後が繊細な音楽である場合は、この方法が有効です。
なお、楽器演奏で脱力が必要な理由については、こちらで解説しています。
>楽器演奏・サックスが上達するために、見落としがちな1番大切なこと
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3.より深く呼吸法を学びたい方へ
より呼吸法を詳しく学びたい方は、こちらの書籍がオススメです。内容は難しいですが、非常に深い内容が書かれています。
まとめ
管楽器の演奏では、呼吸が大切だということで、「息を吸う」ことについて、ここまで考察していきました。いかがだったでしょうか?
- 「息を上手に使う」意識をもつ
- 横隔膜が下がった状態をキープする
- 息を吐ききれば、息を吸いやすくなる
「管楽器の呼吸法」第3回は、こちらになります。
>管楽器の呼吸法 第3回~「息を吐く」2つのコツ。「お腹で支える」とは?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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