「替え指=特殊な運指」だと考えていませんか?
サックスの運指は、前後の音のつながりによって、むしろ「替え指を使う方が普通」である場合もあります。
ここでは、サックスの替え指の使い方について解説をしていきます。
- そもそもサックスには、どのような替え指があるのか分からない
- 替え指に決まったルールがあることを知らない
私バージェスが考える、替え指を使うルールはこちら!
クロスフィンガリングを避ける
音程を補正する
替え指を含めた、正しい指使いを覚えることは、指がスムーズにまわり、音程向上にも繋がります。
逆に、替え指が使えないということは、最適な指づかいをできていない、演奏に無駄があることになります。
ぜひこの記事を最後までお読みいただき、指回しの悪いクセがつく前に直してしまいましょう。
(前提)キーの名称について
サックスのキーには、それぞれ名称があります。
キーの名称に自信がない方は、こちらの記事も参考にしながら、読み進めてください。
記事にも書きましたが、キーの名称は覚えておくとメリットがあります。
覚えやすいよう、キーの名前の由来も解説していますので、ぜひお読みください。
1.指回し対策
替え指を使う1番の理由は、指回し対策です。なかでもクロスフィンガリングを避けるために、替え指は使われます。
替え指を有効に取り入れることで、指回しが効率的になり、より速く指を回すことができます。
1-1.クロスフィンガリング
クロスフィンガリングとは、キーを離す動きと、キーを押さえる動きを同時に行うこと。
クロスフィンガリングになると、指がもつれやすいため、避けれる場面であれば、避けるのが基本です。
楽器の構造からも、クロスフィンガリングを避けられるよう、替え指が用意されています。
1-2.替え指を使う具体的な場面
では、実際に使われる、替え指の具体例を見ていきます。
ファとファ#の連結
ファとファ#の運指は、通常ではこのような運指になります。
この運指だと、ファからファ#に移るとき、右手人差し指を上げながら、右手中指を下げています。
「指を上げる動きと下げる動きを同時に行う」、クロスフィンガリングの状態です。
この場合は、Tfキーを使った次のような運指で演奏します。
Tfキーは右手薬指でおさえます。
ファ→ファ#の連結は、1オクターブ上でも同じ考え方です。
オクターブキーを、押すか押さないかだけの違いになります。
しかし次のような例では、Tfキーは使いません。
Tfキーを使う。
ファ#→レに移るとき、右手薬指がTfキーを離して、6番キーを押すという動きに無駄が多い。
この場合は、通常運指を使います。
この場合は、クロスフィンガリングよりも、右手薬指の動きが大きくなる方がデメリットが大きいことになります。
ファとファ#が繋がるときは、基本Tfキーを使う。
ファ#の次の音が、右手薬指を使う音の場合は、通常運指を使う。
私は、ファとファ#が繋がったとき、どちらの運指でいくかは、楽譜に「Tf」または「5」と書き込んでいる。
「5」は5番キーを使う通常運指の意味。
シとドの連結
シとドの運指は、通常このような運指になります。
この運指だと、シからドに移るとき、左手人差し指を上げながら、左手中指を下げています。
「指を上げる動きと下げる動きを同時に行う」のでこれも、クロスフィンガリングの状態です。
この場合は、Tcキーを使った次のような運指で演奏します。
Tcキーは右手人差し指の根元でおさえます。
しかし、TcキーはTfキーよりも、使用頻度が少ないです。原因は2つあります。
- Tcキーを使った、真ん中のドの音程が、楽器によっては著しく低い。
- 通常運指とTcキーを使った音色の違いが大きい。(Tcキーを使うと、こもった感じになりやすい。)
シとドの連結が出てきたら、基本的にTcキーを使う。
Tcキーを使った替え指は、通常運指では指が間に合わない場面だけ、使うようにする。
ラ#とシ♭の使い分け
ラ#とシ♭は異名同音ですが、この2通りの運指があります。どちらも通常運指として使用しています。
異名同音とは、同じ音の高さだけど、書き方が違う音のこと
この2つの種類の運指は、明確に使い分けます。
楽譜に「ラ#」で書かれているか、「シ♭」で書かれているかで、基本的には次のような運指を取ります。
ラ#・シ♭は、1オクターブ上でも同じ考え方です。
オクターブキーを、押すか押さないかだけの違いになります。
Pキーを使う運指では、シ♮からシ♭に移るのが難しいから
「ラ#」で楽譜が書かれている場合、#系の調性で書かれているため、シ♮の音が出てくる可能性が高いです。
一方、「シ♭」で楽譜が書かれている場合、♭系の調性で書かれていて、シには♭がつくのが基本なので、シ♮の音が出てくる可能性は低いです。
ただし、例外もあります。
例えば、このような分散和音が出てきたら、TaキーよりもPキーの方が楽です。
Taキーを押すと、右手の角度が変わってしまい、その後右手を大きく動かす運指が難しいからです。
基本の指づかいは意識しながらも、次の音との関係で難しいと感じた場合、別の指を使いましょう。
理由部分は難しいので、基本「ラ#」はTaキー、「シ♭」はPキーを使う。
次の音との連結で、この使い方が難しければ、もう一方の運指を試す、という理解でOK。
テーブルキー
まずは、テーブルキーの仕組みを解説します。
- G#キーを押すと開いた穴は、4・5・6番キーを押すと戻る。
- 4・5・6番キーを押さずに、C#・B(H)・B♭キーを押すと、G#キーを押したときと同じ穴が開く。
この仕組みを利用して、運指を簡単にすることができます。
①最初からG#キーを押しておけるパターン
ミ・ファ#はG#キーを押す必要はありませんが、4・5番キーを押しているため、音は変わりません。
初めからG#キーを押しておくことで、ファ#→ソに移るとき、クロスフィンガリングがなくなります。
(初めからG#キーを押していないと、左手小指でG#キーを押し、右手中指で5番キーを離す動きになる。)
②G#キーの代わりに他のテーブルキーを使えるパターン
ソ#の音は本来G#キーを使いますが、次の音でC#キーを使うド#が出てきます。
4・5・6番キーを押さない限り、G#キーと同じ場所が開きますので、代わりに使えます。
最後の音が、下のシだった場合B(H)キーを、下のシ♭だった場合はB♭キーを使えば、同じ効果が得られます。
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2.音程対策
次に、替え指を使った音程対策の考え方を解説していきます。
2-1.閉じるキーと開くキー
サックスのキーを動かして、よく観察してみましょう。
そうすると、この2種類のキーがあることがわかります。
- キーを押すと、楽器の穴を閉じるキー
- キーを押すと、楽器の穴を開くキー
楽器の穴を閉じれば、使う管が長くなるので、音程が下がります。
逆に楽器の穴を開けば、使う管が短くなるので、音程が上がります。
楽器の大きさを考えれば、わかりやすいです。
音程を補正するためには、楽器の穴を塞ぐか・開くかを意識することが重要です。
- 音程を下げたい場合→楽器の穴を閉じるキーを使う
- 音程を上げたい場合→楽器の穴を開くキーを使う
音程を補正するための替え指は無数にあります。
このポイントは意識して、自分の替え指を探してみてください。
2-2.ド#の対策
サックスで最も厄介な音、それがド#です。
真ん中・高音のド#は、替え指である程度、音程も音色も改善できます。
真ん中のド#
楽器によっては、かなり音程が下がりやすいです。
次の替え指があります。
楽器によって、どちらの替え指の効果が高いかが変わってきますので、ご自身で試してみてください。
上のド#
かなり音程が上がりやすく、音も暴れてしまいがちです。
通常運指に、4・5・6番キーを足しましょう。
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3.替え指を使うときの注意点
替え指は便利ではありますが、使うときには注意点もあります。
3-1.音色
使う替え指によっては、音色犠牲にすることもあります。
- 替え指を使うメリット(効率的な運指・音程など)
- 通常運指を使うメリット(音色など)
どちらのメリットが優先するか、考えて指を選びましょう。
3-2.低音域では使えない
替え指は、通常の運指では使わないキーを足して作ります。
しかし、低音域はほとんど全てのキーを使ってしまっているので、替え指はありません。
低音域がうまくいかない場合は、他の方法で原因を対処する必要があります。こちらの記事をヒントにしてみてください。
>サックスの低音域のコツ~音が裏返る・音が震える場合の対応方法
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4.替え指の練習
替え指の練習方法について、考え方を解説します。
4-1.替え指練習の考え方
「替え指」と言う文字通り、あくまで「代替」の指です。通常運指よりおさえにくいケースも多いです。
しかし、解説してきた通り、クロスフィンガリングを避けるなど大きなメリットがあります。
替え指に慣れるまでは大変ですが、矯正して替え指に慣れてしまえば、これから先の演奏がずっと楽になります。
替え指を使えるか使えないかは、大きな差になります。最初は大変ですが、積極的に替え指練習をしましょう。
4-2.替え指練習の教本
松下 洋さん監修の「Perfect Scale for Saxophone Vol.1 Basic」を使うのがオススメです。
音階練習の教本ですが、効率的な指使いが逐一書かれています。
この教本で音階の指使いを覚えれば、曲で応用がききます。
初心者の方には難しい教本ではありますが、少しずつで良いので、練習メニューに組み込んでみてください。
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まとめ
サックスの替え指に関する要点は、次の通りです。
- 替え指を使う1番の理由は、より効率的に指を回すため
- 替え指で音程補正も可能
- 替え指は音色を犠牲にすることもあるので、効率的な運指・音程のメリットと比較して、替え指を使うかどうかを考える
- 替え指は最初は使い勝手が悪いが、慣れればこの先ずっと楽な運指を使えるので、積極的に取り入れる
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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