この記事では前回に引き続き、「チューナーぴったりでなくとも、音程を良くする」をコンセプトに説明していきます。
前回の記事では、「音程を広くとる」という考え方についてお話しさせていただきました。
音程の攻略法①~サックス・吹奏楽の音程の取り方・コツ〜絶対音感と相対音感
今回は、和音をはじめとする、複数の音が同時に鳴ったときの音程の考え方を解説していきます。
- 全ての音がチューナーにぴったり合うのが良いことだと思っている。
- 特にアンサンブルでの音程に悩んでいる。
- 吹奏楽などの指導をしているが、音程の指導に悩んでいる。
- 高音楽器・低音楽器を担当してるが、チューニングをぴったりでとっている。
私バージェスが考える、和音での音程の攻略法はこちら!
他のパートを聴いて、音程を広くとる
低音楽器は基準よりも低く・高音楽器は基準より高くチューニングする
今回は特にアンサンブルや吹奏楽団など、団体で演奏している方に特に役立つ音程の考え方になります。
全ての楽器で同じようなチューニングのやり方をしていませんか?
演奏者だけでなく、指導者の方にもオススメできる内容となっています。
これから解説する音程の考え方を知ることで、自分が狙うべき音程をはっきり見つけることができました。
音程を良くしていくきっかけになりますので、ぜひ最後までお読みください。
1.和音における第3音の取り方
復習になる方も多いと思いますが、まずは和音の音程の取り方を解説していきます。
第3音の取り方は、多くの団体の練習で取り入れられているため、知っている人も多いと思う。
でも音程だけじゃなく、演奏のポイントまで解説していくので、ぜひ読んでほしい。
1-1.長3和音の音程の取り方
長3和音は、吹奏楽部のハーモニー練習でもお馴染みです。どこの吹奏楽団に指導に行っても練習メニューに取り入れられています。
この場合、第3音(この譜例ではミ)の音程は下げる必要があります。
ただ、楽器によって高くなりやすい音が第3音をとっている場合は、音程を下げるのに苦労します。
このとき、指揮者からこのような指示を受けたことはありませんか?(私が過去に実際に受けた指示です。)
- 第3音は、音程低く聴こえるように暗い音色で演奏してください。
- 第3音はバランスを整えるため、他の音より小さめに演奏してください。
実は、この指示は間違えとは言い切れませんが、望ましくないと思われる指示があります。皆さん、わかりますか?
②は正しいが、①のやり方は基本的に不適当。
第3音は小さい音で演奏する。
和音を演奏するときは、第3音<第5音<根音、の順番で大きい音量で演奏するのが美しく響くとされています。
美しく、自然な響きを作れれば、音程の悪さも多少ですが軽減できます。
長3和音の第3音を暗い音色で演奏する。
「暗い音色で演奏することで、音程が低く聴こえる」
この部分は間違いないです。
ただし、長3和音というのは、基本は長調の中の和音です。
長調の音楽というのは、明るい音楽になるので、暗い音色は合わない音が多いのです。
この説明は基本の部分だけを解説しているので、場合によっては、長3和音でも暗くとって良い箇所はある。
しかし、「長3和音の第3音は、音程を下げなければならないから、一律暗くとるべき」というのは誤りだと伝えたい。
長3和音の第3音は音程を下げる。
和音のバランスは、第3音<第5音<根音、の順番で大きい音量だと美しく響き、第3音を小さくするのは有効。
音程を下げるためであっても、暗い音色は原則使わない。
1-2.短3和音の音程の取り方
続いては、短3和音の取り方です。
吹奏楽団体によっては、この短3和音を練習していない団体も多く見受けます。
そのため次のような誤解をしている方を見かけます。
女子学生
和音の第3音は、音程を下げて演奏しなければいけない。
短3和音の場合、第3音の音程は上げなければいけない。
(長3和音の場合と考え方が異なる。)
長3和音で解説した、各音の音量バランス(第3音<第5音<根音の順番で大きい音量)は短3和音においても同じ考え方です。
また、音程を高くしたいからといって、音色を明るくとるのは、暗い短調で主に使う短3和音の場合、望ましくないです。
(明るい音色で演奏することで、音程が高く聴こえること自体は正しいです。)
短3和音の第3音は音程を上げる。
和音のバランスは、第3音<第5音<根音、の順番で大きい音量だと美しく響き、第3音を小さくするのは有効。(長3和音と同じ。)
音程を上げるためであっても、明るい音色は原則使わない。
1-3.第3音の音程の確認方法
このように、和音を演奏するときは、第3音の音程を上下させる必要があります。
具体的に上下させる音程は、以下の通りです。
意識していない方も多いですが、多くのチューナーにこの上下させる音程の目印がついています。
それがこの赤い丸印の部分です。
上記画像は、楽器チューナー Lite by Piascoreのアプリ画像からの引用です。
参考URL
この「14セント下げる・16セント上げる」というのは、あくまで根音と第5音がチューナーの真ん中、ぴったりで取れたときに美しく響くとされているだけです。
ですので、あくまで参考値だということを忘れないでください。
チューナーの値はあくまで参考値。
和音を聴いて、心地よい場所を探すのが1番大切。
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2.音程を広くとる(同時に音が鳴る場合)
2-1.音程を広くとる実例
2-1①.同じ音形でのハモリ
次に、以下の譜例で解説していきます。
サックス・クラリネットなど、1st・2ndのようにパートが分かれているような譜面を想定しました。
1stパートを上の声部(ミファソ)、2ndパートを下の声部(ドレミ)として解説していきます。
このときに気をつけることは次の通りです。
1stと2ndの音程の幅を広くとる。
パート単位で見ると次の通りです。
- 1stパートは音程を高くとる。
- 2ndパートは音程を低くとる。
- 1stパートの音程が低くなる。
- 2ndパートの音程が高くなる。
2-1②.声部が反行(逆向きの動きのこと)する場合
次の譜例では、先ほどの譜例より、さらに音程幅が徐々に広くなっていくのが理想です。
このときに各パートは次のように演奏するべきです。
- 1stパート…ドとレの幅を広く、レとミの幅を広くとり、その結果ドの音の音程が高くなる。
- 2ndパート…ミとレの幅を広く、レとドの幅を広くとり、その結果ドの音の音程が低くなる。
このように演奏すると、最後の2分音符の音程は、結果的に広くとることになります。
自分のパートだけでなく、周りの動きも聞きながら音程をとることが大切。
この感覚は、チューナーとにらめっこしながら演奏しているとできません。
2-1③.和音の場合
和音の譜例も見てみます。これは長3和音(この譜例ではドミソ)を様々な音域の楽器で演奏しています。
前述したとおり、長3和音なので、第3音(この譜例ではミ)の音程を下げることで、美しい響きが得られます。
これだけで教科書的にはOKですが、実際の現場では次のポイントに留意して、演奏してください。
- 高音パートの音程→少し高くとる
- 低音パートの音程→少し低くとる。
こうすることで和音全体の響きが広がり、豪華に聴こえます。
しかし次の場合は例外です。同じ長3和音(ドミソ)ですが、音の配置が違い、高音パートに音程を下げたい第3音(ミ)が配置されています。
この場合は、「長3和音の第3音は下げる」というセオリーが優先し、高音ミの音程は低めに演奏します。
基本的に高音パートは音程を少し高めに、低音パートは音程を少し低めに演奏する。
ただし、和音の第3音が出てきたときは、和音の中での第3音の取り扱いのルールが優先する。
2-2.チューニング
ここまでの内容を整理すると、次の傾向が見られます。
- 高音楽器→より高く音程をとることが多い
- 低音楽器→より低く音程をとることが多い
ですので、高音楽器・低音楽器の方々はチューナーの真ん中でチューニングすることを推奨しません。
- 高音楽器→音程高めにチューニングする。
- 低音楽器→音程低めにチューニングする。
私が吹奏楽団に指導へ行く際に、あえて真ん中でチューニングをしないようお願いしているのは、次の楽器です。
高音楽器 | ピッコロ・フルート・オーボエ・E♭クラリネット・1stクラリネット・ソプラノサックス・1stアルトサックス・トランペット |
低音楽器 | チューバ・コントラバス・バスクラリネット・バリトンサックス・バストロンボーン |
次の例を見てみましょう。
フルートの音程で考えます。
- 音程が20セント高かった。
- 音程がぴったり取れた。
- 音程が10セント低かった。
- 音程が20セント低かった。
音程の良し悪しを、「チューナーの針の真ん中に近い方が良い」という考えだと、次の発想になりがちです。
女子学生
チューナーの針が真ん中に近い方が、正しい音程に近いので、②→③→①・④の順で正しい音程に近い。
前述したとおり、音程は周りの音との兼ね合いがあるので、一概には言えませんが、基本的には次の回答となることが多いです。
①(音程が20セント高い)が1番音程が合っているように聴こえることが多い。
※20セントは例えを使って解説しているだけなので、一律20セント高いことを良しとしているわけではありません。
②(音程がぴったり取れた)でも一見良さそうですが、周りの音程が高くなると、音程の幅が狭くなってしまい、低い音程に聴こえてしまいがちです。
「音程は他の音程との距離で感じる」前回の相対音感でお話しさせていただいた部分となります。
高音楽器→音程が少しでも低くなるとかなり目立つが、高くなっても目立たない。
低音楽器→音程が少しでも高くなるとかなり目立つが、低くなっても目立たない。
高音楽器・低音楽器は、チューナーぴったりの音程が取れていても、他の音との兼ね合いで、音程が合っていないように聞こえてしまう。
このポイントがあるから、チューニングごと変えてしまおうという発想となるのです。
私もソプラノ〜バリトンまで4つのサックスを演奏するが、チューニングは楽器によって微妙に変えています。
特に、ソプラノを吹くときは音程が下がらないように、バリトンを吹くときは音程が上がらないように注意をしている。
いかがだったでしょうか?
チューナーに合わせることだけが大切ではないということを知るきっかけとなってもらえれば嬉しいです。
ただし、前回もお伝えしたとおり、「やり過ぎ」は良くないのでそこは注意してくださいね。
次回は、メロディ・旋律から音程について考えてみたいと思います。
「音程の取り方・コツ」第3回はこちら!
音程の攻略法 第3回~サックス・吹奏楽の音程の取り方・コツ〜メロディ・個人練習
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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