サックスで感動的な表現をするためには、ビブラートは切っても切り離せません。しかし、正しいビブラートのかけ方・練習方法・どのようなビブラートを使うのかを理解していないと、いつまでたっても感動的な表現はできません。
将来的に感動的な表現ができるよう、基礎から応用まで、ビブラートの全てを解説していきます。
どこにでも書いてある、波のかけ方やメトロノームを使った練習方法だけにとどまらず、より実践的な練習方法を解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
(導入)ビブラートとは
ビブラートとは音を伸ばす際に、音程や音量などを微妙に変化させることで、音を揺らす技術のことです。
サックスは音程を変化させてビブラートをかけるのが一般的です。弦楽器も同様の仕組みです。
一方でフルートやオーボエなどは、音量を変化させてビブラートをかける楽器です。
1.サックスのビブラートのかけ方・仕組み
サックスのビブラートは「顎(あご)」でかけます。
サックスを吹きながら、「ワウワウワウワウ」と顎を動かすと、音程が変わり、音に波ができます。
このとき動かすのは、下顎のみ。(上の歯は動かさないように注意する)
これは、アンブシュアを動かすことで音程が微妙に変化しているためです。
- 「ワ」…口を開く動き。口の中が広くなり、音程が下がる。
- 「ウ」…口を閉じる動き。口の中が狭くなり、音程が上がる。
下にあるように、標準音程(理想はチューナー真ん中付近)に対して、音程を上下させるイメージです。
「息」「喉(のど)」「お腹」でかけるビブラートは、サックスでは一般的ではありません。
ビブラートの基本を習得する段階では、考えなくてOKです。
まずは、自分の吹きやすい音を伸ばしながら、「ワウワウ」と顎を動かしてみましょう。
この段階で音が切れることなく、波が作れて(音程が上下して)いればOKです。これがサックスのビブラートです。
音程が上下しているかは、チューナーを見ながら確認します。
上手くいかない人は、「ワウワウ」の口の開く・閉じる動きを、大きくしたり、小さくしたりして、波はかかるけど、音は切れない場所を探してみましょう。
- 波がかからない場合…「ワウワウ」の動きを大きくしてみる
- 音が切れてしまう場合…「ワウワウ」の動きを小さくしてみる
多くの人はビブラートをかけすぎ(「ワウワウ」言い過ぎ)ている
確かに「ワ」と「ウ」の方向に口を動かすことは間違えありませんが、実際は「ワウワウ」とはっきり聴こえるほど口は動かしていません。
レッスンできれいなビブラートをがかからないと相談する人の9割は、顎を動かしすぎている。
ロングトーンの中に波が溶け込んでいる(ロングトーンも波も両方聴こえる)状態がベスト!
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2.いつからビブラート練習を開始するか
「音がまっすぐ伸ばせるようになったら」ビブラートの練習を開始すべきです。
ビブラートは、わざとアンブシュアを動かして、音に意図的に波を作る奏法です。
音がまっすぐ伸びていない状態は、アンブシュアや息づかいが安定していないことから、意図しない音の波・揺れが生じてしまっている状態です。
意図した波(ビブラート)を見せるには、意図しない波ができていない状態(音がまっすぐ伸びている状態)が必要です。
そうしないと、意図した波と意図しない波が混在してしまい、効果的にビブラートが使えないためです。
「音がまっすぐ伸びる」条件がクリアできていて、ビブラートにチャレンジしたいなら、なるべく早くビブラートの練習を始めてほしい。
憧れのテクニックなら、「好きこそ物の上手なれ」ということで、どんどん上達していけるはず。
3.良いビブラートと練習方法
ビブラートの練習方法を解説します。
練習の目的・前提を理解するために、「良いビブラート」について、先に解説していきます。
ビブラートに限らず、目的を理解して練習に取り組むことが大切。
3-1.良いビブラートとは
良いビブラートを一言でいえば、「その曲に合ったビブラートをかけること」です。
ビブラートは、「かける」or「かけない」の2択ではありません。
ビブラートの3つの構成要素
ビブラートは次の3つの要素で構成されています。
- ビブラートの速さ(波を速くかけるか・ゆっくりかけるか)
- ビブラートの大きさ(大きい波にするか・小さい波にするか)
- ビブラートの高さ(ビブラートなしの音程より、高い音程の波にするか・低い音程の波にするか)
①〜③を組み合わせることで、無数の組み合わせができます。
この無数の組み合わせから、音楽的にふさわしいビブラートを選び取る必要があります。(ビブラートの選び方については後述します。)
まずは「ビブラートには3つの構成要素がある」ということを理解してください。
美しい音であることが大原則
「ビブラートをかけない音が、美しい音であること」これが何より重要です。
ビブラートだけ目が行きがちですが、ロングトーンなどで地道に音色を鍛えることが必要です。
最終目的は「良いビブラート」なのではなく、「良い演奏」であることを忘れないでください。
「ビブラートは、ステーキにかけるスパイスのようなもの」だと考えてほしい。
どれだけ最高級のスパイス(ビブラート)を使っても、肝心な肉(音)がイマイチだと、美味しいステーキにはならない。
3-2.ビブラートの練習方法
先ほど解説した、「ビブラートの3つの構成要素」を自在に操るための練習が必要になります。
速さをコントロールするための練習
一般的なビブラートの練習は、ビブラートの速さを均一にするための練習です。
「ワウ」という、「口を開く→口を閉じる→元の口に戻す」という一連の動きを書かれたリズムで行います。息はまっすぐ入れます。
自分ができるテンポから始めてOKです、♩=80くらいまでできれば十分です。
必ずメトロノームを鳴らしながら練習してください。
一息で吹けない場合、途中でブレスをとってください。
サックスのビブラートの目安は、♩=72の16分音符とされます。
厳密にこの速さを守る必要はありませんが、テンポ感をある程度覚えておくようにしましょう。
大きさをコントロールする練習
均一な速さでビブラートがかかるようになったら、次に波の大きさをコントロールする練習を行います。
「ワウワウ」という顎の動きを大きくすれば大きな波が、小さくすれば小さい波ができます。
次の4パターンができるように練習します。
- なるべく大きな波をかける
- なるべく小さな波をかける
- 小さい波から、徐々に大きい波にしていく
- 大きい波から、徐々に小さい波にしていく
ビブラートをつなぐ練習
曲やエチュードを使って、音と音のつなぎ目も波が綺麗にかかるように練習します。
音域によって吹奏感が変わるので、1つの音でビブラートをかけるよりも難易度が高いです。
3つの構成要素からは外れますが、実践では必要な力となります。
高さをコントロールする練習(応用編)
標準音程から、上下に均一にビブラートをかけるのが基本ですが、あえて音程を高め or 低めでビブラートをかけることもあります。
- 高い音程を作る→「ワウワウ」の「ワ」の口の動きをやり過ぎず、「ウ」の口を少し大きめに作る。
- 低い音程を作る→「ワウワウ」の「ワ」の口を少し大きめに作り、「ウ」の口をやり過ぎない
かなり難易度が高いため、応用編です。
高音域・低音域でも使えるようにする
ここまで解説してきた練習方法を、高音域・低音域でも実践してください。
高音域・低音域では、音を出すこと自体が難しいので、ビブラートも難易度が上がります。
低音域へ行くほど、わずかに顎の動きが大きくなる
高音域へ行くほど、わずかに顎の動きが小さくなる
音域による顎の動きの差はほんのわずかです。自分の耳で聴いて、良いビブラートがかかっているか判断するようにしましょう。
ビブラートの練習で使える、より詳しい譜面や演奏例などは、こちらにまとめています。
>サックスのビブラートの基本~かけ方・やり方と4つの練習方法
ビブラート練習の教本
ビブラートだけに特化した練習が掲載されている教本は、おそらくこの1冊です。
メインは音階練習の教本ですが、ビブラートの奏法についても解説があります。
特にビブラートを学び始めた初心者にとっては、効果的な練習方法が掲載されています。
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4.ビブラートを選び取る
ビブラートがかかるようになると、次のような悩みが生まれます。
- ビブラートはどの音にかけるべきか
- どのようなビブラートをかけるべきか
4-1.ビブラートの答え
「ビブラートをかけるべきか」、「かける場合どのようなビブラートをかけるのか」という問いに、答えはありません。
ビブラートに限らず、演奏者が音楽をどのように表現するかは、演奏者自身の音楽的な価値観や好みによって決まります。
演奏をどのように表現するかの答えは、自分の音楽的な価値観や好みによって決めるべきで、それこそが答えです。
私が生徒さんと同じ音を吹いたとき、「私ならビブラートをかけるか・かけないか」、「私ならどのようなビブラートをかけるか」ということまでしか答えられない。
レッスンでは私ならどうするかは解説するが、それが生徒さんにとっての答えになるとは限らない。
答えを探すヒントとなるのが、「良い音楽をたくさん聴く」ということです。
自分が演奏する曲に限らず、たくさんの曲を聴いていけば、自分の中に音楽的な価値観や好みが自然と生まれます。そうすると、かけたいビブラートをイメージできるようになってきます。
「良い音楽を聴くことの重要性」に関しては、こちらの記事でより詳細に解説しています。
>サックス・吹奏楽部員のための音色改善・イメージの重要性とセンスについて
4-1.ビブラートをかける音とかけない音
ビブラートをかける傾向がある音は、次の通りです。
- 長い音
- 主張すべき音(フレーズの頂点など)
動きの無いものより、動きの有るものが目につきやすいのと同じで、ビブラートの波は音を目立たせます。
弦楽器は管楽器と比較して、短い音であってもビブラートをかける傾向があります。
この演奏では、弦楽器をイメージして、ほぼ全ての音にビブラートを入れて演奏しています。参考にしてみてください。
4-2.ビブラートのバリエーションを作る
ビブラートの波の速さと波の大きさで、ビブラートのバリエーションを作ります。
波の速さと大きさは、次の4パターンと、ビブラートをかけない(ノンビブラート)という計5つのパターンをベースに考えます。
波の速さが速いほど、波の大きさが大きいほど、テンションの高い表現が可能です。
Aのパターンは、音量がpであったり、穏やかな箇所であっても、ノンビブラートでは味気ないと感じる部分で有効に使えます。
A~Eの5パターンを作るわけでなく、例えばAとBの間のような表現も可能。
こうすることで無数のビブラートのパターンができる。
また、難易度は高いですが、ビブラートの音程をコントロールすることで、更に深い表現が可能です。
高い音程でビブラートがかかれば、より高いテンションを表現することができます。
ビブラートを選び取るためのヒントは、こちらにより詳しくまとめています。
>サックスのビブラート~表情豊かな演奏にするためのかけ方とコツ
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5.ビブラートとテンポ
「曲でビブラートを使う場合、ビブラートの波の速さを曲のテンポに合わせない」ことが重要です。
ビブラートの波が、1拍の中に必ず3つ or 4つしか入らない
これが「ビブラートと曲のテンポが合ってしまっている」状態です。
ビブラートと曲のテンポが合ってしまうと、押し付けがましく・機械的に聴こえてしまいます。
前述したような、テンポ通りに波を入れる練習をしているため、曲でも同じようにビブラートをかけてしまう人が多いです。
この練習は、あくまで波の速さをコントロールできるようにするための練習なので、曲では適用しません。
ビブラートを使って、拍の数を数えてしまっても、この現象におちいります。
曲のテンポとビブラートの数は、一致するとは限らない。
- テンポキープ…頭の中でしっかりテンポを刻む(意識的)
- ビブラート…波の速さや大きさをイメージしたまま表現する(無意識的)
頭の中で2つの回路を持つようなイメージです。
演奏はテンポキープする方が優先。
ビブラートを曲のテンポに合わせないようにすると、反動で曲のテンポキープもできなくなってしまいがちです。
テンポキープができていない演奏は、より不自然な演奏になりますし、他のメンバーとのアンサンブルにまで影響を及ぼしますので、注意してください。
簡単に思えるかもしれないが、頭の中で数えているテンポと、ビブラートを合わせないというのは、実はかなり難しい。
私自身も相当苦労した。
ビブラートとテンポの関係、具体的な練習手順は、こちらにより詳しくまとめています。
>サックスのビブラートの速さ~上手く表現できない場合の確認項目
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まとめ
サックスのビブラートの要点は、次の通りです。
- サックスのビブラートは顎でかけるのが基本
- ビブラートの練習は、音がまっすぐ伸ばせたら始めてOK
- ビブラートの構成要素3つ(波の速さ・大きさ・高さ)を自在に操れるよう練習する
- ビブラートのバリエーションを作り、自分のイメージした表現に合ったビブラートを使う
- ビブラートと曲のテンポを同じにしない
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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