サックスのエチュード(=教本・練習曲)には、さまざまな種類が出ていてどれを選んだら良いかわからない、という方は多いです。
そこで、私が実際に取り組んだエチュードについて、使った感想やどのような内容が書かれているのか、取り組む順番などを解説していきます。
初心者の方でも、挑戦できるエチュードもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
- エチュードはたくさんあって、どれを選べば良いのかわからない。
- サックスの定番のエチュードには、どのようなものがあるのか知りたい。
私バージェスの、エチュードに対する考えはこちら!
スケール(=音階)の教本は必ず1冊持つこと
定番のエチュードを、今すぐ練習に取り入れるべき
今回、紹介しているエチュードは、特に定番と言われているもので、長年の実績があるものばかりです。
全て私自身が実際に取り組んだものですので、深く内容を説明していけます。ぜひ、最後までお読みください。
1.エチュードをやってみよう
レッスンに伺うと、特に吹奏楽部で活動している方は、このような内容の練習をしています。
- 基礎練習(ロングトーンやタンギングなど)
- 吹奏楽のために書かれた、基礎合奏用の教本
- 次回の演奏会に向けた、曲練習
エチュードは、「サックスの上達を目的とした」曲です。
吹奏楽の曲や教本は、残念ながらサックスの上達を目的としているわけではないので、上達のスピードはどうしても遅くなりがちです。
基礎練習は非常に重要ですが、それだけでは単調になりがちです。
エチュードは曲の形で書かれていますので、より実践的な練習ができます。
サックスの上達をしたいなら、エチュードを練習に取り入れるべき。
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2.具体的なエチュードの紹介
ここからは、実際のエチュードについて解説していきます。
Perfect Scale for Saxophone Vol.1 Basic(松下洋)
kindleなど電子書籍化されてはいませんが、松下洋さんのHPからPDF版も購入可能です。
必ず「Vol.1 Basic」を購入してください。Vol.2からは、書かれている音階の難易度が一気に上がるプロ・音大生向けの教本です。
(但しVol.2は、フラジオ運指を学ぶ用途なら、購入する価値の高い本です。)
- 傾向…音階練習
- レベル…初級〜上級
始めるタイミング
音階練習は、どのレベルであっても取り組むべき練習です。
初心者〜上級者まで、どのレベルであっても常に持ち歩くべきエチュードです。
内容
メインは音階練習のエチュードです。
1冊で長調・短調全ての調が、最高音から最低音まで学べます。
- 音階
- 3度練習
- 4度練習
- 分散和音
練習方法
初心者の方は、まずは通常の音階をゆっくりから練習しましょう。(各調で最初に書かれた練習のパターンです)
不慣れに感じても、必ず指定された運指で練習し続けること
このエチュードの順番通りに、進む必要はないです。
まずは色々な調で、通常の音階を吹けることを目標にします。
これだけでも日頃なかなか演奏しない、低音域・高音域を使うことになりますので、かなり効果的です。
テンポは問わないので、1息で吹ける調が増えたら、簡単な調の3度音程・分散和音に挑戦していきましょう。
注意点・その他
このエチュードを推奨する理由は、音階・スケール練習で使うべき、正しい運指が指定されているからです。
長調・短調全ての音階を、全音域にわたって練習できるエチュードであれば、どれを選んでも長く使えます。
しかし、正しい運指が逐一書かれているのは、「Perfect Scale for Saxophone Vol.1 Basic」だけです。
正しい運指で音階が吹ければ、曲であっても、効率の良い運指を選ぶことができます。
このPerfect Scale for Saxophoneが発売される前は、いくつかオススメのスケール教本はあったが、今はこれ一択。他の選択肢はあり得ないと言えるレベル。
私自身、別のスケール教本を長年使っていましたが、今はこちらに買い替えました。
サクソフォーンのための50の易しく漸新的な練習曲(ラクール)
- 傾向…メロディ練習
- レベル…初級
始めるタイミング
楽器の音が出て、指を覚えて、曲にチャレンジできるレベルまで達したら始めてみましょう。
内容・練習方法
かなり幅広いメロディーを、網羅的に学習できます。
スタッカートを多用したメロディも出てきます。
次の理由で、とても取り組みやすいエチュードです。
- 1曲目は、♩=72でほとんどが2分音符なので、初心者でも演奏しやすい
- 50曲の間、緩やかに難易度が上昇していく
ラクールの練習方法については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
>サックス教本・エチュード~ラクールの練習方法と得られる効果
注意点・その他
「ラクールのエチュード」と言われたら、基本的にはこの「50の易しく漸新的な練習曲」を指します。
しかし、ラクール氏は他にもたくさんのエチュードを出していますので、注意して購入してください。
25の日課練習課題(クローゼ)
- 傾向…テクニック練習
- レベル…初級
始めるタイミング
最低でも、調号(#・♭)が3つくらいまでの長調・短調の音階が、暗譜で吹けるレベルになってから始めるのを推奨します。
内容
テクニック練習のエチュードとしては、初級レベルではあります。
しかし、吹奏楽の曲だけをやってきた人が挑戦するには、難易度が高いと感じるかもしれません。
「指づかい自体が難しい」と感じることは、多くはないですが、目まぐるしく転調します。
練習方法
ゆっくりから、メトロノームを使って練習しましょう。
目まぐるしい転調はありますが、調号が変わることは少なく、臨時記号で転調が示されています。
単純に書かれた音符を追うだけではなく、自分が今、何の調を演奏しているか、を常に考えながら演奏しましょう。
また、細かなアーティキュレーションも守るように注意しましょう。
【中級者以上】
ある程度演奏ができる人にとって、このクローゼというエチュードは、集中力の練習です。
似たような音形が転調されたり、アーティキュレーションが変わったり、と難しくはなくともノーミスで演奏することは大変です。
まずは「●回までのミスはOK」と決めて、通しで練習し、ミスを減らしていきましょう。
注意点・その他
クローゼの25の日課練習は、いくつもの出版社から販売されています。
その中でも「ルデュック(LEDUC)社」から出版されているものをオススメします。
このエチュードは1曲が長いので、必ずどこかで1拍休んで、ブレスをとる必要があります。
ルデュック社のエチュードは、そのブレスの位置が全て指示されていますので、悩むことなく練習ができます。
他の出版社のものと比べて、値段が高いのがネックですが、長く使えるエチュードですので、自分もルデュック社のものを愛用していました。
当時、吹奏楽しかやったことのなかった私が、テクニックの練習としてこのエチュードを購入したが、難しすぎてビックリしたのを今でも覚えている。
「サックスの技術はまだまだ先がある」「吹奏楽の練習ばかりしていては、ダメだ」と気が付かせてくれたエチュード。
クローゼのエチュードの練習法や取り組むメリットについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
>【クローゼ:25の日課練習】効果的な練習方法とメリット~サックス教本・エチュード解説
サクソフォンのための20の旋律的練習曲(ブレマン)
- 傾向…メロディ練習
- レベル…中級
始めるタイミング
ラクールの50のエチュード終了後が望ましいです。
内容
このエチュードで学べる、最も重要なことは、次の2つです。
- 演奏し続ける体力をつける
- 装飾音符やターン、トリルなどの装飾記号を、美しく演奏する
②に関しては、後述する「サクソフォンのための48の練習曲(フェルリング)」でも練習はできますが、①に関しては唯一無二かと思います。
5〜10分程度の曲を、休みなく演奏し続けます。
練習方法
このエチュードは、まず通しで演奏することです。
このエチュードに到達できるレベルの方であれば、1曲目は初見でも演奏できる難易度ではありますが、通すとなると難しいです。
これは「息が余る」ことが原因です。
フレーズごとにブレスをとると、息を吐ききれなくて、お腹の中に古い空気がどんどん溜まっていきます。
こうなってくると、演奏に力みが生じて上手くいかなくなります。
また、多数出てくる装飾記号は、演奏方法を楽典で調べて、正確に演奏しましょう。
楽譜上に、きっちりしたリズムで書けないからこその “装飾記号” です。
装飾記号の演奏方法は、伝統的なクラシックの録音を聴いて、センス良い音の入れ方を学ぶことが大切です。
注意点・その他
このエチュード、個人的には大好きなのですが、サックス吹きには人気がありません…
このエチュードを学ばない方も、いらっしゃいます。
しかし、演奏をする体力をつける唯一のエチュードなので、独学でも取り組むことをオススメします。
このエチュードは、まるでヴァイオリンのために書かれたかのように、美しい曲が揃っています。
私自身、「息を吸うこと・吐くこと」「装飾記号の美しい入れ方」をこのエチュードで徹底的に勉強しました。
ベルビギエによる18の練習曲
- 傾向…テクニック練習
- レベル…中級〜上級
始めるタイミング
クローゼの25のエチュード終了後が望ましいです。
内容
18個の調性で、テクニック練習をしていきます。
1オクターブを超える音の跳躍が、随所で登場するなど、指だけでなくアンブシュアやブレスコントロールまで駆使して演奏が必要となります。
前述したクローゼの25のエチュードよりは、かなり難易度が高い内容となっています。
練習方法
ゆっくりから練習することは必須ですが、なんとなく指だけ回っていても音楽になりません。
音域によって「鳴りムラ※」があるからです。鳴りムラがあると、ベルビギエは演奏できません。
※音によって鳴っている音と、鳴りにくい音が混在すること
全ての音域で、統一した鳴りを手に入れるには、地道ですがこちらで練習方法を解説しています。
>ロングトーン応用編~サックス・吹奏楽奏者に向けた効果的な練習
指やフォームの脱力も、かなり意識する必要があります。
力んでいては絶対に指が間に合わない箇所が、いくつもあります。
注意点・その他
曲自体がカッコイイので、先程のブレマンのエチュードとは逆に、サックス吹きからは人気のエチュードです。
それゆえ、演奏するテンポが速くなりすぎている、という懸念もあります。
(このエチュードは、速度記号のみで、具体的なテンポは示されていません。)
ベルビギエのエチュードは、元々フルートのために書かれたエチュードです。
技術を見せつけるのではなく、速い中でも美しさを感じられるような仕上がりにするのがポイントです。
テクニックが必要な曲は、ただ指を回しきれば良いわけではない、ということを教えてもらったエチュード。
やはり管楽器は「息」で勝負。
サクソフォンのための48の練習曲(フェルリング)
- 傾向…メロディ練習・テクニック練習
- レベル…上級
始めるタイミング
ラクール・クローゼの終了は必須。可能であればブレマンも学習してからが望ましいです。
ベルビギエは併用でも良いです。
内容
全ての長調・短調で、メロディ練習・テクニック練習を行います。
偶数番号がメロディ練習、奇数番号がテクニック練習となり、徐々に調号が増えていきます。
練習方法
全調性にわたって、メロディ・テクニックの練習が書かれています。
自分が取り組んでいる曲の調性に合わせて、ピックアップするのも良い使い方です。
まず最初に苦しむのが「テンポキープ※」です。
※メトロノームなしでも、一定のテンポをキープし続ける技術
メトロノームのように均一なテンポを刻む必要はありませんが、メロディを歌うことに意識を向けすぎて、拍感を失わないように注意しましょう。
ほぼ全ての曲で、♩=72とありますが、これにとらわれる必要はありません。
これはサックスのビブラートを考案したマルセル・ミュール氏が、♩=72のテンポに4つビブラートの波を入れることを良しとしたためです。
自分の音楽性で、ベストと感じるテンポで演奏しましょう。
そして、テンポキープを注意しすぎて、歌がなくなるのも良くないです。
個々の曲ごとの難しさはありますが、テンポと歌のバランス感は、全曲を通して難しいポイントです。
エチュードに書かれた指定テンポは速すぎるので、少しテンポを落としてOKです。
指定テンポは、プロでも難しいレベルの速さとなっています…
ただし、全ての曲に速度記号はあるので、その雰囲気は失わないようにしましょう。
また、デミニッシュスケールなど、長調や短調ではない音階も登場します。
音階も意識して演奏しましょう。
注意点・その他
長調・短調が24調に、メロディ・テクニックの2通りの練習で、48(24×2)の練習曲ですが、この練習曲は60曲あります。
異名同調分をマルセル・ミュール氏が加筆しています。
もともとオーボエのためのエチュードでもあるので、サックスの荒々しい部分が出ないように演奏する必要があります。
フェルリングのエチュードは曲としての完成度も素晴らしく、何周でも繰り返し取り組みたい。
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まとめ
今回紹介したエチュードの特徴と難易度は、次の通りです。
- Perfect Scale for Saxophone Vol.1 Basic(松下洋)…音階練習・初級~上級
- サクソフォーンのための50の易しく漸新的な練習曲(ラクール)…メロディ練習・初級
- 25の日課練習課題(クローゼ)…テクニック練習・初級
- サクソフォンのための20の旋律的練習曲(ブレマン)…メロディ練習・中級
- ベルビギエによる18の練習曲…テクニック練習・中級~上級
- サクソフォンのための48の練習曲(フェルリング)…メロディ/テクニック練習・上級
エチュードをやることで、サックスの実力がどんどん伸びてきます。
この記事を読んだ方の1人でも多くが、エチュードに取り組んでくれたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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