サックス教本の代表であるラクールの練習方法を、1曲ごとに解説します。
ここでは、第3曲目を解説します。演奏例は、こちらで公開しています。
ラクールには本来、ピアノ伴奏はありません。
しかし、サックスのような単音楽器(1度に音が1つしか出せない楽器)であっても、和声の流れを意識して演奏することは大切です。
私自身、ラクールは50曲全てを学習しました。
また、ラクールに関しては独学でも、レッスンを受けたことも、レッスンをしたこともあり経験豊富です。
私自身がつまづいた点、レッスンする際に重視している点を中心にまとめました。ぜひ、最後までお読みください。
全体を通じて
演奏全体の注意点を解説します。
この練習曲のテーマ、習得すべき技術とも言えますので、特に意識して練習しましょう。
全体の構成
次のような構成となります。
- 導入部(1~16小節目)…ハ長調(C-dur)
- 展開部(17~32小節目)…ト長調(G-dur)
- 再現部(33~41小節目)…ハ長調(C-dur)
導入部・展開部は8小節ごとに分割できます。
前半の8小節間の終わりは半終止、後半の8小節の終わりは完全終止でフレーズを閉じます。
半終止は、曲の区切りを出しますが、まだ次に続くように演奏します。
一方で全終止は、しっかり吹ききってフレーズを閉じます。
終止の種類は楽典的な勉強が必要。
最初は難しいのでまずは、半終止は「、(読点)」で、完全終止は「。(句点)」だと考えてみよう。
跳躍進行
2曲目でも解説した、跳躍進行がメロディの中に多く登場します。(1小節目・3小節目など)
低い音をしっかり演奏し、そのエネルギーを使って、高音域を演奏します。
レ→ド#→レの動き
この曲では、真ん中のレ→ド#→レの動きが多数登場します。
レ↔ド#の難点と解決策
レ↔ド#の動きを、サックスでスムーズに演奏するのは難しいです。
- 動かす指が多い
- 音程が合わせにくい
- 吹奏感が2つの音で大きく違う
レの音程は高くなりやすく、ド#の音程は低くなりやすいです。
2つの音の音程幅が大きくなりすぎてしまうと、音痴に聴こえてしまいがちです。
真ん中のレの音程を下げるための練習法は、こちらで解説しています。
レの運指は、おさえるキーが多く、ベルの先端まで息が流れます。(吹奏感が重い)
それに対して、ド#はキーをおさえないため、キーの穴からも息が漏れてしまいます。(吹奏感が軽い)
どちらの音も、できるだけ同じ息の使い方で、良い音が鳴る演奏法を探しましょう。
更に詳しい練習法は、こちらの記事で解説しています。
>ロングトーン応用編~サックス・吹奏楽奏者に向けた効果的な練習
ド#の替え指
ド#には、レ↔ド#の動きで問題となる、3つの難点を克服するための替え指があります。
次の指でド#を演奏すると、うまくいきやすい場合があります。
本来キーを押さないド#の音で、キーを押すことで次のメリットがあります。
- 動かすべき指の数が減る
- 通常の運指より、音程が上がりやすい
- 吹奏感がレの音に近づく
ド#の音程を下がりすぎないようにするための機能が、楽器に元からついている場合もあります。(セルマー シリーズ3など)
その場合、替え指を使うとド#の音程が上がりすぎてしまうケースがあります。
下行音形のクレッシェンド
2〜3小節の長いクレッシェンドがあります。
- 13小節目〜
- 21小節目〜
- 29小節目〜
クレッシェンドの間に、音が下行している(徐々に音が低くなっていく)部分がポイントです。
自然な音量変化とは逆になっています。
- 音が上行していく→徐々にクレッシェンド
- 音が下行していく→徐々にデクレッシェンド
音の上行が続く部分は自然にクレッシェンドとなるので、自然な音量上昇を少しだけ息で補強するイメージで演奏します。
逆に音の下行が続く部分は、よりクレッシェンドをかける意識を強く持って演奏しましょう。
音の上行・下行が「続く」場合、クレッシェンド・デクレッシェンドのかけ方を変える(一定にしない)
クレッシェンド・デクレッシェンドのかけ方を変えるのは、その方が自然にフレーズが繋がるから。
自分の音をよく聴いて、自然に聴こえる息づかいを探そう。
ちなみにこの曲全体で、最大音量はmfです。
音量差を明確にするために、普段より大きめにmfを演奏しましょう。
個別のポイント
各小節やフレーズごとの個別の注意を解説します。
5・6小節目
クレッシェンド・デクレッシェンドは、大袈裟にやりすぎないようにします。
1小節目から、音量はpのままです。
小さい音量の中で、テンションを上げることを意識しましょう。
41小節目
フェルマータは「書かれている音の長さより、長く演奏する」という意味で、拍を数えて演奏しません。
倍の4拍ぴったり伸ばす、などしないようにしましょう。
拍感(拍のカウント)が無くなるように演奏することが、フェルマータでは圧倒的に多いです。
ラクール全般の練習方法や次の曲に進むべきタイミングなどについては、こちらの記事で解説しています。合わせて参考にしてください。
>サックス教本・エチュード~ラクールの練習方法と得られる効果
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
サックス初心者が最短で中・上級者になるためのメソッドをこの1冊に詰め込みました。
以下のリンクから冒頭の数ページを無料で読むことができます。(Kindle unlimited会員は全て無料で読めます。)