フラジオ音域を出すにあたり、運指に悩むことはありませんか?
様々な文献を参考に開発した、フラジオ運指を複数紹介していきますので、皆様の運指探しのヒントにしてください。
また、音階など具体的な音の並びで、「どのフラジオ運指を選択すれば効率的か」という実践的な観点からも運指を紹介していきます。ぜひ最後までお読みください。
1.フラジオ運指の考え方
フラジオ運指で特に大切な考え方は、次の通りです。
1-1.複数の運指を知っている方が良い
フラジオの運指は、複数知っていた方が有利です。例えば、次のようなパターンです。
- 運指は複雑だけど、フラジオ音域が出る可能性が高い運指…フラジオから始まるフレーズや、フラジオで長い音を伸ばす場合に使いやすい
- フラジオは若干当てにくいが、単純な運指…連符の中にフラジオがある場合に使いやすい
フラジオの使用局面や前後の音によって、使う運指を変える
1-2.自分の楽器に合った運指を探す・覚える
フラジオの運指は、使用している楽器や演奏方法によって、微妙に変わってきます。
色々なフラジオ運指を参考に、 自分に合った運指を探すことが大切
「プロ奏者でも、奏者ごとに使っている運指が微妙に違う」というのが一般的です。
また、見つけた運指は正確に覚えておくことも大切です。
通常運指と同じく、押すべきキーを間違えると、音が出なかったり、違う音が出てしまったりするのと同じです。
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2.登場頻度の高いフラジオ運指(アルトサックス)
私が使用している、アルトサックスのフラジオ運指を紹介します。(登場頻度が低い、超高音域のフラジオは、ページ下部で番外編として紹介します。)
前述した通り、 使用している楽器や演奏方法によってフラジオの運指は変わるので、皆さんにとっては、この運指が正解とは限りません。
この運指を参考にしながら、キーを足し引きしていき、皆さん自身の運指を見つけてもらえると嬉しいです。(私自身も色々な書籍を参考にしながら、運指を探してきました。)
- 本体:Selmer Serie Ⅱ(Jubilee以前モデル)
- マウスピース:Selmer Concept
- リガチャー:BG Tradition
- リード:Legere Signature 3
ここから解説するフラジオの運指で、キー名称が分からない場合、こちらを参考にしてください。
テナーサックスのフラジオ運指は、こちらで解説しています。
丸印(〇 or ●)は、1~6番キーを上から順に並べたものです。〇が塞がない、●が塞いだ状態を表します。それ以外に押さえるべきキーは、キー名称を書いています。
これから解説する運指は、こちらからPDFファイルをダウンロードしていただけます。
ミ・ファ・ファ#(E・F・F#)
通常音域ではありますが、フラジオ奏法としての運指も存在します。
次の運指で演奏することで、フラジオ運指とスムーズにつなぎやすいので、覚えて使えるようにしましょう。
音域はフラジオにはなっていないけど、奏法はフラジオになっているのがこれらの運指。
音域をイメージしやすい分、フラジオ奏法の感覚をつかむには最適です。
ソ(G・実音B)
- G-1…個人的に1番当てやすく、使用頻度も高い。6番キーを外しても可。また、楽器によってはE♭キーを足した方が良いこともある。但し、前後にC3キーを使う音があると指の動きが大きくなり過ぎて使いにくい。
- G-2…G-1並みに当てやすい。前後の音によっては、C5キーの操作が難しめ。
- G-3…若干当てにくいが、前後の音でフロントキーを使うと接続しやすい。
ソ#(G#・実音H)
- G#-1…個人的に1番当てやすく、使用頻度も高い。
- G#-2…やや当てにくい。G-2との接続用。
- G#-3…やや当てにくい。前後の音でフロントキーを使う場合に使用。
- G#-4…当てやすい。楽器によっては、5番・6番のキーを足しても可。
ラ(A・実音C)
ラの音は、フラジオの中でも最も当てやすい音になります。ソやソ#よりも当てやすいので、まずはラから試すのもありです。
- A-1…かなり当てやすく、前後の運指と不都合がなければ、この運指を使用。音程が高くなりすぎる場合は、B♭キーも押さえる。
- A-2…G#-1との連結用。
- A-3…楽器によってはA-1よりも当てやすい。Taキーを足しても可。
- A-4…前後の音にフロントキーがある場合にのみ使用。
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3.フラジオ運指の連結
ここまで音ごとの運指を紹介してきましたが、実際の曲では、フラジオの前後の音から使う指を考えます。
フラジオ運指は独特の指使いが多く、適切な運指を使わないと、音楽が不自然に途切れてしまうことがあるからです。
ここでは使用頻度の高い「ラ」の音まで、実践的な音の並びから、どのフラジオ運指を使えば良いのかヒントを紹介しています。
音階の上行形を使って解説していますが、下行形の場合も同じ運指を使えば基本OKです。
- フロントキーを使う運指…指回しは簡単だが、音が裏返りやすい。(パターン①として紹介)
- フロントキーを使わない運指…音は当てやすいが、指回しが難しい。
半音階
パターン①(フロントキー)
フロントキーを使った、オーソドックスな運指の並びです。
指は比較的簡単ですが、若干音を当てにくいです。(特にソ#)
ソ#をG#-3の運指で取れれば、次のラの音はどの運指にも行きやすいです。
パターン②
パターン①より、フラジオ自体は当てやすいですが、運指が難しくなるパターンです。
特にファ#→ソの連結が難しいです。C5キーは薬指で、G-2運指で4番キーとTaは中指で押さえます。
ファ#の前の音で、C3キーを使わない場合、ファ#をイレギュラーな運指(通常運指のC3の代わりに、Taを押さえる)でとることもできます。
この場合、ファ#の音程が低くなりやすいので注意します。
ハ長調(C-dur・実音E♭-dur)など
パターン① (フロントキー)
フロントキーを使った、オーソドックスな運指の並びです。
ソ#をG#-3の運指で取れれば、次のラの音はどの運指にも行きやすいです。
パターン②
ファの運指を替え指でとるパターンです。
ファ→ソの連結は、 C5キーは薬指で、G-2運指で4番キーとTaは中指で押さえます。
パターン③
ファをイレギュラーな運指(通常運指のC3の代わりに、Taを押さえる)でとります。この場合、ファの音程が低くなりやすいので注意します。
この運指は、ファの前の音でC3キーを使う音(高音ミなど)が出てくる場合は、人差し指の動き(C3→Ta)と大きくなりすぎるので、レガートにならず使いにくいです。
G-1の運指は6番キーを押さえなくてもOKです。少し当てにくくなりますが、この方がファ→ソへの連結がスムーズです。
ト長調(G-dur・実音B♭-dur)など
パターン① (フロントキー)
フロントキーを使った、オーソドックスな運指の並びです。
ソ#をG#-3の運指で取れれば、次のラの音はどの運指にも行きやすいです。
パターン②
パターン①より、フラジオ自体は当てやすいですが、運指が難しくなるパターンです。
特にファ#→ソの連結が難しいです。C5キーは薬指で、G-2運指で4番キーとTaは中指で押さえます。
ファ#の前の音で、C3キーを使わない場合、ファ#をイレギュラーな運指(通常運指のC3の代わりに、Taを押さえる)でとることもできます。
この場合、ファ#の音程が低くなりやすいので注意します。
イ長調(A-dur・実音C-dur)など
この音符の並びは、イベール作曲の「アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲」で登場します。
パターン① (フロントキー)
指は簡単ですが、フロントキーを使ってファ#からソ#を当てるのがかなり難しいです。
パターン②
パターン①の課題であったソ#はかなり当たりやすくなります。但し、ファ#→ソ#がレガートになりにくい運指です。
タンギングを使うパッセージであれば、問題なく使用できます。
パターン③
ファ#の運指を替え指でとるパターンです。 この運指であればレガートでつながります。
替え指のファ#が若干当てにくいこと、ファ#の前の音でパームキーを使う場合、つなぎにくいのが難点ですが、使いやすい運指パターンです。
イ短調(c-moll・実音a-moll)
パターン① (フロントキー)
ファ→ソ#に移る際、2番キーを離すタイミングとTaを押すタイミングがズレないように注意しましょう。
ズレてしまうと音が裏返りやすくなります。
パターン②
ファ→ソ#がレガートになりにくい運指です。タンギングを使うパッセージであれば、問題なく使用できます。
パターン③
ファ#の運指を替え指でとるパターンです。 この運指であればレガートでつながります。
替え指のファ#が若干当てにくいこと、ファ#の前の音でパームキーを使う場合、つなぎにくいのが難点ですが、使いやすい運指パターンです。
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4.運指以外のフラジオへのアプローチ
「ここまで紹介してきた運指を使えばフラジオが出る」というわけではありません。運指以外で注意すべき点を解説します。
4-1.運指以外のフラジオのコツ
フラジオを吹くとき、特に重要なポイントは次の2点です。
- 息を入れすぎない
- 口の中の容積を狭く
フラジオの出し方のコツと、練習方法については、こちらの記事にまとめています。
>サックスのフラジオ~演奏のコツ・フラジオ特有の演奏方法と導入練習を解説
また、フラジオ奏法は、オーバートーンが奏法の一種です。
実際に鳴っている(聴こえている)音には、かすかにその音より高い音が鳴っています。
このかすかに鳴っている高音のことを、オーバートーン・倍音と呼びます。
オーバートーンの練習方法については、こちらの記事でまとめています。
>サックスのオーバートーン・倍音のコツ~譜例あり!音色改善の練習法
オーバートーンは、フラジオだけでなく、通常音域の音色向上にも凄く有効な練習方法。
中級者以上の生徒さんには、必ず取り組んでもらっています!
4-2.基本奏法の重要性
フラジオに限らず特殊奏法は、柔軟な基本奏法があると、習得が速いです。
やりがちなのが「特殊奏法の練習」を中心に考えてしまうことです。
例えばフラジオを習得したいがために、フラジオ練習に多く時間を割く人を見かけます。(気持ちはわかります…)
そこで無理にマウスピースを噛んでアンブシュアを崩したり、力んで演奏していたりして、通常奏法にも影響が出てしまうことがよくあります。
確かにフラジオ特有の奏法(アンブシュアや息づかいなど)は存在します。しかし、アンブシュアや息づかいのコントロールはあくまで基本奏法の領域です。
フラジオを使わずとも、アンブシュアや息づかいは変えながら演奏します。
「基礎練習をしっかり行ったうえで、少しずつフラジオなどの特殊奏法にもトライする」、このくらいのバランスを推奨します。
アンブシュアや息づかいなどの基本奏法がしっかりしていた方が、結果的にフラジオの習得も速い。
私自身、フラジオに特化した練習をしていない時期もありましたが、久しぶりにフラジオ練習をしたら、音域が格段に広がっていました。
遠回りなようで、実は基本奏法をきちんと身に付けることが近道です。
【参考】フラジオ運指の教本
フラジオを学ぶ上で、いくつかの教本がありますがこちらの教本を推奨しています。
- ソプラノ~バリトンまで運指が、1つの音に対して多数掲載されている
- 簡単な内容から、徐々に学べる構成になっている
- オーバートーンも併せて練習できる
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まとめ
フラジオ運指の要点は、次の通りです。
- 自分に合った複数の運指を、可能な限り見つけて、覚える
- フラジオの使用局面や前後の音によって、使う運指を変える
- 運指だけでなく、フラジオ特有の奏法やオーバートーンも身に付ける
【番外編1】宝島のフラジオ運指
吹奏楽曲で人気の高い、「宝島」のアルトサックスソロ部分のフラジオ運指を解説します。
※リズムは全て2分音符で表記しています。
パターンⅠ-① (フロントキー)
フロントキーを使うパターンです。
連結はしやすいですが、フロントキーでは、ソ#を当てるのが特に難しいです。
パターンⅠ-②
運指は難しくなりますが、フロントキーを使わない分、音が裏返る危険性は減ります。(特にソ#はこちらの運指がだいぶ楽です。)
下りはパターンⅠ‐①のようにフロントキーを使うのもありです。下りの音形には、裏返りやすい危険性が1番高いソ#がないためです。
パターンⅡ-①(フロントキー)
運指はシンプルですが、ソの音が裏返らないように注意します。
パターンⅡ-②
音は当てやすいですが、運指がやや複雑です。ファは通常運指でなく、替え指を使っています。
最後の音3つ(ファ→ソ→ファ)のときに、C1を離す・塞ぐタイミングが遅れないように注意してください。
【番外編2】使用頻度の低い、超高音域のフラジオ運指
本編では紹介しなかった、超高音域のフラジオについて、私が使用している運指を紹介します。
ラ#(A#・実音C#)
どの運指も比較的当てやすいので、前後の音で運指を決める。
- A#-1…A-1と接続しやすい。E♭キーを押しても可。
- A#-2…G#-1など、Tc・Taを使う運指と接続しやすい。
- A#-3…A-3と接続しやすい。若干音程下がりやすいので注意。
シ(B・実音D)
オクターブキー・C1キーは確実に押さえ、あとは下記のキーを足したり外したりして、当てやすい運指を探してください。B-1・B-2はその一例です。
- 3番キー
- 4番キー
- G#キー
- Taキー
- Tcキー
ド(C・実音E♭)
- C-1…サイドキーを使う運指と接続しやすい。楽器によっては、Ta又はTc(両方でも)は外しても可
- C-2・C-3…サイドキーを使わない運指と接続しやすい。グラズノフのサクソフォン協奏曲の最終音など。
ド#(C#・実音E)
- C#-1…どちらかと言えば当てやすい。
- C#-2…通常音域のミ(E・実音G)と同じ運指。オーバートーンで上の倍音吹くイメージで当てる。
レ(D・実音F)
- D-1…どちらかと言えば当てやすい。
- D-2…通常音域のファ(F・実音A♭)と同じ運指。オーバートーンで上の倍音吹くイメージで当てる。
レ#(D#・実音F#)
息が少しでも多くなると当たらない。少ない息量をピンポイントで当てるイメージ。
D#-2は、通常音域のファ#(F#・実音A)と同じ運指。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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