この記事では、2022年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ「やまがたふぁんたじぃ」から、知っておくと便利なサックスの奏法や練習方法を紹介します。
吹奏楽曲を年間100曲以上、吹奏楽のCDを30枚以上リリースした私が感じた、課題曲の演奏のポイントを公開します。
やみくもに練習をしても、コンクールで良い賞をとることは難しいです。
この記事を読めば、練習の質が上がり、良い賞に近づきます。
記事の最後に、私自身が各パートを演奏した動画を掲載します。こちらもぜひ参考にしてください。
演奏解説
「やまがたふぁんたじぃ」を演奏するにあたり、特に必要とされるサックスの奏法・練習方法について解説します。
高音域の音程
5小節目のアルト・テナーの音域は、音程が高くなりがちです。
音程が高くなる原因のほとんどは、マウスピースを必要以上に噛んでしまうためです。
マウスピースを噛まないためには、顎(あご)を使わず、口の周りの筋肉だけでアンブシュアを作ります。
「ウ」と発音するときの口をすぼめる力を強くするイメージです。
顎の力を使ってマウスピースを噛んで演奏することは、リードの振動を妨げてしまうことにつながるので、避けましょう。
口の周りの筋肉だけを使う限り、どれだけ力を入れてもリードの振動を強くおさえることができません。
アンブシュア・高音域全般のコツは、こちらの記事で詳しく解説しています。
>サックスのアンブシュアについて全て解説〜クラシック・吹奏楽奏者向け
>【演奏の誤解を解消】サックスの高音域を出すコツ・5つを厳選し解説
また、サイドキーを使った高音レの音は、通常運指に加えて、4・5・6番のキーを押さえることで音程を下げられます。
※キー名称がわからない場合、こちらをクリック→サックスのキー名称
アーティキュレーション
「やまがたふぁんたじぃ」では、数多くのアーティキュレーションが登場します。サックスのアーティキュレーションの正しい吹き方を解説します。
スタッカート
サックスのスタッカートは、レガートで演奏するときのように息は出したまま、舌だけで音を止めるのが基本です。
サックスはリードが振動することで、音が出ます。息は出しっぱなしでも、舌でリードの振動を止めてしまえば、音は出ません。
スタッカートが上手くいかないのは、無意識に舌以外(アンブシュアなど)を動かしてしまっていることが多いです。
吹奏楽やクラシックをやっていると、息で音を止める習慣がないため、次のような練習も取り組んでみてください。
上の楽譜を演奏します。
下の楽譜は息の流れを表しています。(=ロングトーンと同じ息づかい)
上記の楽譜が上手く演奏できたら、次の楽譜にもトライしてみましょう。
2つ目の楽譜は、4分音符でスタッカートがあった場合でも、同じ吹き方で演奏できます。
ちなみにスタッカートの語源に「短く」という意味はありません。スタッカートの語源は「離す」です。
音と音が繋がらないように「離す」ので、結果的に音が短くなる、ということです。
中級者向けのテクニックですが、音量大きくなるほど、音の長さを微妙に長くしていくと効果的です。長い音の方が聴き取りやすく、大きな音に聴こえやすいため、音量差が際立ちます。
音と音の間が「離れて」いれば、スタッカートとしての解釈として間違えていません。
アクセント
横アクセント(>)と縦アクセント(^)がありますが、どちらもはっきり立ち上がる点は共通です。
ただし舌を動かし過ぎないように注意しましょう。音の立ち上がりにノイズ(雑音)が入る原因になります。
横アクセント(>)は、はっきり発音した後、音を抜きます。
音を抜くとは、小さなデクレッシェンドがあるイメージで、音を小さくします。
アクセントは音符1つに対してかけるので、デクレッシェンドほど時間をかけられません。素早く音を小さくします。
縦アクセント(^)はっきり発音した後、音は抜きません。
打楽器を思い切り叩いたようなイメージで演奏します。横アクセントと比較して、強く演奏されることが多いです。
テヌート
テヌートが書かれた音は「音に重さを乗せて」演奏します。
一般的にテヌートは、「音の長さを保つ」という意味で書かれています。(テヌートの語源は「保つ」です。)
しかしサックスを演奏するときは、「音に重さを乗せる」と解釈する方が多いです。
そして、弦楽器奏者が弓をしっかり返すときのようなイメージで、タンギングをします。
音に重さを乗せるには、短い音だと演奏しにくいため、結果的に長くなった、というイメージで演奏します。
そのため、音を過度に伸ばし過ぎる必要はありません。
連符の練習方法
「やまがたふぁんたじぃ」では、サックスで演奏するには、難しい音の並びの連符がいくつか出てきます。
根気強く練習する必要があることは間違えありませんが、練習にあたって、以下の3点に注意してください。
- 脱力を意識する
- フォームを考える
- 全音域で良い音がする吹き方を探す
脱力
サックスを演奏することで、最も大切なことは、「できる限り脱力した状態」で演奏することです。
身体の力が抜けると、より自由に動くことができ、速い動きをすることが容易になります。
しかし難しいパッセージほど、力が入りがちで、脱力が難しいです。
どこかに力みがないか、より脱力して演奏することはできないか、ゆっくりのテンポで練習するときから、常に試行錯誤しましょう。
脱力は、楽器演奏者にとっての永遠のテーマ。課題曲に限らず、常に意識しましょう。
また、脱力は難しいパッセージを演奏する以外にも、様々なメリットがあります。
詳しくはこちらの記事にまとめていますので、是非お読みください。
>【脱力】楽器演奏・サックスが上達するために、見落としがちな1番大切なこと
フォーム
サックスを演奏するときの指の動かし方は、2通りあります。
- キーを「押す」動き
- キーを「離す」動き
この2つの動きをする上での注意点は次の通りです。
- キーを「押す」ときは、力んで押さえすぎないように
- キーを「離す」ときは、脱力すればバネの力で勝手に戻る
キーを動かすときも脱力が重要です。左手親指は力が入っても気付きにくいので、注意しましょう。
細かいようですが、難しいパッセージではこの一瞬を丁寧に取り組まないと、上手くいきません。
最低限の力で、キーを押す・離すという動きを1つ1つ、「テキパキ」と行うイメージ。
これはゆっくりの曲でも同じ。
また、演奏するときに、左手首の角度に注意してください。
手首には「内転」「外転」と呼ばれる動かし方があります。
手首が「外転」してしまうと、指が動かしにくい。
左手は、高音のパームキーがあるので、手の大きさやパームキーの角度によっては、外転してしまっている可能性があります。
そうなると左手の指回しが遅くなるので、注意してください。
全音域で良い音がする吹き方
音域によって、吹きやすい奏法は変わりますが、どの音域でも良い音がする奏法が必要です。
プロや上級者は、速いテンポの中で奏でられる短い音であっても、全ての音が良い音色で響かせます。
短い音ごとに、アンブシュアなどの奏法を変えることは、ほぼ不可能です。
どんな音域であっても1通りの吹き方で、良い音が鳴る状態を作れることが大切。
下記の譜例を参考にしてください。
最初の音から、半音ずつ下がる動きを複数回繰り返します。
半音ずつ下がっていき、最低音まで繰り返します。
半音ずつ上がり、自分の最高音まで繰り返す練習も同じ要領で行います。
この練習で必ず守って欲しいポイントは次の通りです。
- 半音の動きで、息の使い方・奏法を変えない。
- 半音の間で、音色・響き方が近くなるよう演奏する。
- フェルマータのついた音とその次の音も、息の使い方・奏法を変えない。
- 音色・響きなどで、上手くいかない音が出たら、一旦演奏を止める。
- 上手くいかなかった音が良い音になるように、息の使い方と奏法を変更する。
- 変更した奏法で、最初の音からやり直す。
この練習の意義やメリットは、こちらの記事で紹介していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。
>ロングトーン応用編~サックス・吹奏楽奏者に向けた効果的な練習方法
難しい曲・フレーズを攻略するためのヒントは、こちらの記事に詳しくまとめています。連符だけではなく、様々なパターンの難しい曲への対応を紹介しています。
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演奏動画
実際に私が演奏した動画を掲載します。参考にしてください。
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