アンブシュア

サックスのアンブシュア 〜顎(あご)の使い方・下唇の痛みからの脱却方法

サックスのアンブシュアの中でも、「顎(あご)の使い方・噛まないアンブシュア」というテーマに特化して解説していきます。

サックスのアンブシュア全般に関しては、こちらの記事に詳しくまとめています。

>サックスのアンブシュアについて全て解説〜クラシック・吹奏楽奏者向け

この記事を読んでほしい方
  • サックスを演奏するときにマウスピースを噛んでしまって、下唇が痛い。
  • 正しいアンブシュアで吹いたとき、楽器を付けずマウスピースだけで吹いた時の音程を知りたい。
  • 口で音程を上下する方法を知りたい。
  • 急に高音や低音がでてきたときに、音が当たらない。

私バージェスが考える、「顎」使い方で注意する点はこちら!

結論

噛(か)みつかない(顎を使わない)で、唇の筋肉だけでアンブシュアを作る

吹くときにマウスピースを噛みすぎて、演奏すると下唇の裏側が痛くなる、といった方は多いのではないでしょうか?

噛みつかないで吹くことができれば、痛みから解放されるだけでなく、音色が良くなったり、タンギングやビブラートさえも楽にできるようになります。

噛んで演奏することは、デメリットが多いので、噛みつく吹き方から抜け出すヒントをつかむために、ぜひ最後まで読んでみてください。

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1.噛みつかない

アンブシュアでの顎の使い方で、1番注意して欲しいことは、「噛みすぎない」ということです。

ここからの解説では、噛む力が強くなってしまっている状態を「噛みつき奏法」と呼んで解説していきます。

1-1.噛みつき奏法のデメリット

噛みつき奏法のデメリットは以下のとおりです。

噛みつき奏法のデメリット
  • 下唇の裏側が痛くなる
  • リードの振動を妨げてしまう
  • 口周りに力が入ってしまい、タンギングやビブラートに支障が出る
  • アンブシュアが固定されがちで、音色の変化をつけられない
  • ビブラートでは、音程を下げる方向にしか変化させられない

1-2.噛みつき奏法を直すことで得られること

噛みつき奏法をやめることで、1番のメリットは「リードの振動を妨げない」という点です。

サックスなどのリード楽器は、リードの振動によって音が鳴ります。

噛みついている=リードが振動しようとしているのに、それをおさえつけてしまっている

噛みつき奏法は次の悪循環・負のループを生みます。

  1. 噛んでいることから、リードが振動しにくくなる
  2. リードの振動がしないため、さらに息を吹き込もうとする
  3. 息を吹き込もうとすると、口元に力がさらに入ってしまい、噛む力がさらに強くなってしまう
  4. さらにリードの振動がしにくくなる

噛みつかずに、リードの振動を妨げなければ、息の量を減らしても、楽器はしっかり鳴る。

つまり、効率よく息が使える。

「息を吹き込もうとしないこと」これは以前解説した呼吸法、「吸気主動」の考えとなります。

>管楽器の呼吸法 第3回~「息を吐く」2つのコツ。「お腹で支える」とは?

また、口元に力が入ること自体、良くありません。演奏は「脱力」が最も大切だからです。

>楽器演奏・サックスが上達するために、見落としがちな1番大切なこと

1度に理解することはなかなか難しいですが、このように脱力・呼吸法・演奏法がつながっているのです。

1-3.対応方法

マウスピースやリードに全く力を加えずに音を出すことは不可能です。

しかし顎の力というのは、マウスピースやリードに力を加えるには強すぎます。

顎を使わず、唇(くちびる)の力を使ってアンブシュアを作る。

「ウ」と発音するときに唇がすぼまる、この力でマウスピースやリードを包み込むイメージ。

唇の力というのはそこまで強い力はでませんが、マウスピースやリードにかける力としては十分です。

「唇の使い方」に特化して、こちらの記事で解説しています。

>サックスのアンブシュア~口元の作り方と下唇の巻き方

バージェス

初心者の方は特に、中級者の方であっても、全く噛まずに唇だけで演奏するのは難しいかもしれない…

その場合は、音がコントロールできるところのうち、ギリギリまで噛む力が弱くできるところで練習をしてみよう。

練習についての考え方は、こちらにも書いていますので、読んでみてください。

>楽器上達のコツ!毎日の楽器練習を効率よく行うための2つの考え方

噛んでしまっても下唇が痛くならないように、あぶらとり紙を4回ほど折って下の歯にかぶせると、痛みが軽くなります。

あぶらとり紙は100均のもので十分です。

下唇の保護用にリッププロテクトなるものも、楽器屋さんで購入できます。

1-4.マウスピースだけで吹いたときの音程

噛みつき奏法かどうか調べるのに、マウスピースだけで吹いたときに、どの音が出ているかがヒントになります。

噛みつきが強ければ強いほど、マウスピースだけで吹いたときの音程は高くなる。

次の表は、私がマウスピースだけで吹いたときの音程の一覧です。

楽器音程(実音)
ソプラノH
アルトA
テナーF♯
バリトンE

皆さんもチューナーを使って、マウスピースだけで吹いたときの音程と比較してみてください。

※あくまで普通に吹いている状態でチェックしてください。ズルして口で音程を下げるのは、ここではナシです笑

バージェス

ここに記載した音程が正解というわけではない。

ただ、噛みつき奏法でなくなると、音程はこのくらいになる、という目安にしてみてほしい。

1-5.マウスピースとリードのセッティング

マウスピースとリードのセッティングについては、別の機会で記事にしますが、ここでは1点だけ解説します。

抵抗が強いセッティング(マウスピースの開きが広い・リードが硬い)の場合は、噛みつき奏法になりがち。

抵抗が強いとより多くの息が必要となるので、息を吹き込もうとすると口にまで力が入りがちで、結果的に噛んでしまうことが多いです。

バージェス

色々な吹奏楽部へ指導へ行くが「3 1/2のリードで吹ける人が上手で、吹けない人が3のリードを使う」という謎の理屈がをよく聞く…(もちろんこれはデマ…苦笑)

私はレコーディングや、吹奏楽をバックでソロを吹かせていただいたときも、3のリードで吹いていました。

噛みつき奏法に悩んでいる方は、リードの番手を下げることも試してみてください。

ちなみにリードをつける位置を少し下げるだけでも、抵抗感が軽くなり、噛みにくくなるケースもあります。

リードのつけ方に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

>演奏が変わる!サックスのリード・リガチャーの付け方

1-6.初心者・指導者の方へ

上達のために噛みつき奏法は避けるべきです。しかし初心者の方にとっては、噛みつき奏法の方が簡単というメリットもあります。

噛みついた方が音は出しやすく、アンブシュアもぐらつかず、楽器の支えが安定するからです。

まずは安定するところ、自分が演奏しやすいところまで、一旦噛みついて演奏してみましょう。

まずは音が出るアンブシュアで練習しながら、少しづつ噛みつかないアンブシュアに移行していく

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2.アンブシュアで顎を使う場面

顎はビブラートでは大活躍しますが、アンブシュアでは次の2つの役割だけ担います。

2-1.上下の歯の位置をそろえる

上下の歯の位置をそろえるために、顎を少し前に出します。ほとんどの人は、上の歯が前に、下の歯が後ろになっているためです。

顎を前に出すと、下の歯もそれに合わせて前に出るので、上下の歯の位置を揃えることができます。

(元々の歯並びから、上下の歯が並んでいる場合は、顎を前に出す必要はありません)

顎を使って、上下の歯の位置を揃える。

上下の歯を揃える理由は、息の方向をまっすぐにするため。

上下の歯の位置と息の方向
  • 上の歯が前→下方向の息
  • 上下の歯の位置が揃う→まっすぐな息
  • 下の歯が前→上方向の息

極端に上の歯か下の歯を前に出して、息を吐いてみるとわかりやすいと思います。

サックスは音が出しやすい楽器ではありますが、息を当てて綺麗な音が出る場所はものすごく狭いです。

息がまっすぐ出ていないと、その狭い場所を狙うのがさらに難しくなってしまうのです。

2-2.演奏中に顎を動かす(応用編)

顎を動かすことで、音程を変化させることができます。

この奏法は、噛みつき奏法から卒業できていないとできない、応用編となります。

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【応用編】顎を使った音程の変化

基本となるアンブシュアは、前述したとおり上下の歯をそろえて、まっすぐの息で演奏します。

しかしわざと顎を動かすことで、次の効果が得られます。

演奏中にやること息の方向効果
顎を前に出す息が上向きになる高音が当たりやすい
音程が高くなりやすい
顎を後ろに引く息が下向きになる低音が当たりやすい
音程が低くなりやすい

次のように顎の位置を演奏中に変えています。

  • 急に低音が出た場合→顎を後ろに引く
  • 急に高音が出た場合→顎を前に出す
  • 音程が低くなりがちな音が出た場合→顎を前に出す
  • 音程が高くなりがちな音が出た場合→顎を後ろに引く

噛みつき奏法だと瞬時に顎を動かすことはできない。

顎を前後に動かしたいのに、噛み付いていると、顎は下から上への力がかかってしまっているため。

顎を前後にたくさん動かす(といっても数ミリの世界ですが)こともあれば、本当に微妙に位置をずらすだけの時もあります。

顎の位置が前・標準・後ろの3パターンなのではなく、色々な位置がある、ということも覚えておいてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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