- 以前はできていた演奏が、できなくなってしまった
- 練習はしているけど、自分が下手になっているように感じる
実は、スランプで思うような演奏ができない場合であっても、少しだけセッティングや演奏方法を見直すだけで、簡単に解消することが多いです。
楽器演奏は様々な要因(アンブシュア・姿勢・息の入れ方など)がつながっていて、何か1つの小さな原因があるだけで、演奏が上手くいきません。
逆に言えば、上手くいっていない箇所を特定し、修正できればすぐに元の演奏に戻すことができます。この「上手くいっていない箇所」の特定・修正方法こそが、スランプの克服方法となります。
サックス歴20年以上・吹奏楽のCDを30枚以上リリース・テレビ出演実績のある私が実践する、スランプ克服方法や考え方を7つ、解説します。
この記事では、スランプについて、セッティング・演奏方法・考え方など多方面からアプローチしていきます。
この記事を読むと、数あるスランプ克服方法の中から、あなたに合ったものを発見できます。
また、スランプの克服方法を多数知っておくことで、将来スランプになった時に役立ちます。ぜひ最後までお読みください。
・セッティングを見直す(ストラップの長さ・リガチャーの位置)
・奏法を見直す(ネックまでの練習・呼吸・舌の位置)
・調子の良い状態の奏法を覚えておく
1.セッティングからスランプを克服する
まずは簡単にできる、セッティングの見直しから解説します。
セッティングの再確認は、数分あればできる。
色々な方法を試したが、結局はこれから解説する簡単な方法で、スランプが克服できた経験は、今でもかなり多い。
1-1.ストラップの長さ
顔の位置を真っすぐにして、顔を動かさずにマウスピースが口元までくる状態が、正しいストラップの長さです。
真っすぐな顔の位置とは、横を向いたときに、引っ掛かりがなく、スムーズに顔を動かせる位置です。
スランプ時は、ストラップが長すぎていないか確認します。ストラップが長すぎると、首を下げ、下を向くような状態で、マウスピースを顔や口で追いかけてしまいがちです。
まずは顔の位置をしっかり決めてから、ストラップの長さを決める。この順序を徹底する。
真っすぐの位置に顔を固定すると、足の裏で脳の重さを支えますが、顔が下がると背中で脳の重さを支えることになります。背中に力が加わると、息の流れも悪くなります。
脳の重さは約5kgあり、思っているよりもずっと重く、影響が大きいです。
サックス演奏の姿勢全般に関する内容は、こちらの記事で詳しく解説しています。
1-2.リガチャーをつける位置を色々試す
リガチャーをつける位置を手前(口寄り)にするか、奥(ネック寄り)にするかで、吹奏感が大きく変化します。
どの位置にリガチャーをつければ演奏しやすいかは、次のように要因が多岐にわたります。
- リードの硬さ・状態、リードを付ける位置
- 演奏者の奏法
- 使っているリガチャーの種類
そのため、一概に「リガチャーはどの位置が良い」とは言えません。色々な位置を試して、自分に合う場所を探しましょう。
私は樹脂リードをメインで使っているので、リードの状態は一定で、ほぼ変化しない。
リードの状態やリードをつける位置でも、もちろん吹奏感は変化しますし、リード自体がスランプの原因となることはあります。
しかし、リードについて気にする場合は多いですが、リガチャーの位置まで考慮できる場合は多くありません。
リードやリガチャーの付け方に関する詳細な内容は、こちらの記事で解説しています。
2.演奏法からスランプを克服する
次に、演奏方法のちょっとしたズレで、スランプになってしまった場合の克服方法を解説します。
2-1.ネックまでで演奏し、奏法を確認する
マウスピースとネックで演奏すると、確認項目が少ないので「息の使い方」「音色」「鳴り・響き」をシンプルに確認できます。
マウスピースだけでもなく、楽器本体をつけてでもなく、ネックまでの状態がベストな理由は、次の通りです。
マウスピースだけの練習
- 出る音が非常にやかましく、音色の変化を検知しにくい
- 音が鳴るツボが非常に狭いので、息の方向を変化させるのが難しい
楽器本体をつけての練習
- 音域によって抵抗感が変わり、息の使い方だけ意識することが難しい
- 音程など様々な要素が気になるため、ネックだけの方がシンプル
ネックまでの状態で、マウスピースをくわえる角度、息の方向や息の量を変化させて吹きます。
1番音色が良く、鳴っている息の使い方を覚え、この状態で楽器をつけて演奏します。
今でも私自身、スランプで納得のいく音色が出ないときは、楽器本体をつけずネックまでで奏法を確認している。
スランプの時は、ネックまでで吹いたときに、1番良い音が鳴っていないことが多い。
こちらの記事では、マウスピースだけでの練習方法についても解説しています。
>スランプ脱出のヒント!サックスのマウスピース・ネックを使った練習
2-2.呼吸を再確認する
スランプ時、呼吸で特に確認すべきポイントは「息を入れ過ぎていないか」「深く息を吸えているか」の2点です。
息を入れ過ぎないか
楽器に必要以上の息を入れ過ぎていないか、確認してみましょう。少し楽に演奏するイメージです。
必要以上の息を使っていると、身体やアンブシュアの力みにつながり、楽器がさらに鳴らない。そのためさらに息を吹き込む、といった悪循環に陥りがちです。
特にスランプ時は、楽器が鳴っていないように感じるために、より多くの息を吹き込もうとする傾向があります。
また、ストラップの長さのところで説明したように、顔の位置が真っすぐでないと、息の通りが悪いので、より多くの息が必要となるケースがあります。
私自身も実践し、オススメするのが、「吸気主動」という呼吸法の考え方です。
「吸気主動」とは、吸気(空気を吸うこと)を主動(主な動き)とする呼吸法です。「吸気主動」での呼吸は、具体的には次のように行います。
- 腹式呼吸を使ってたくさん息を吸う
- アンブシュアを作って、息の出口を狭くする
- 脱力する+お腹(腹筋)を使って、息を吐きすぎないように我慢する(楽器を吹こうとしない)
息を深く吸うほど、脱力したときに出ていく息の量は増えます。また、息の出口を狭くすることで、息のスピード・圧力も上がります。(ホースの先をつまむと、勢いよく水が飛び出すのと同じ原理です。)
「吸気主動」に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
>管楽器の呼吸法 第1回~腹式呼吸の復習と「吸気主動」という新しい考え方
息を深く吸えているか
楽器に息が入っていないと感じる場合は、意識的に息を深く吸うように心がけます。
力んでしまうほど限界まで吸う必要はありません。「深く」(=横隔膜をしっかり下げる)イメージで吸います。
先ほど解説した「吸気主動」の呼吸では、 息を深く吸うほど、脱力したときに出ていく息の量は増えます。
深く吸えていないと、脱力してもわずかな量の息しか外へ出ていきません。
息がきちんと吸えていない状態で楽器を吹くと、口元・アンブシュアが力んでしまい、奏法が乱れます。
2-3.喉に力が入っている場合、舌の奥を上げる
喉に力みを感じる場合、舌の奥を思い切り上げて、アンブシュアを作ると改善されます。具体的には、次の図のようなイメージです。
喉に力みがあると、演奏が不自由になるため、スランプになるケースが多いです。
喉を意図的に開こうとする必要はありません。良い演奏で使うべきは、喉でなく「声帯」です。
歌を歌っている時と同じ声帯の状態で、楽器を演奏する
実際に歌を歌うと、地声で離している時と比較して、声帯の状態が変化していることが分かります。楽器を吹いている時も、同じ声帯の状態になるように意識してみてください。
「楽器を吹くときは、喉を開くように」と指導されることがあるので、無理矢理に喉を開いている方を見かけますが、それでは逆効果。
喉と声帯は非常に近い位置にありますが、別の器官です。
喉・声帯についての使い方については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
>サックス・吹奏楽部員向け~声楽から学ぶ音色・ピッチ改善・高音域の当て方
3.調子が良いときの状態の奏法を覚えておく
調子が良い状態のときに、あえて奏法を変化させて、「どう演奏すると上手くいかないのか」確かめておきましょう。
演奏の調子の良い状態こそ、自分の奏法を徹底的に観察することが重要です。
スランプ時は、奏法や道具など様々なことを試します。逆に調子の良いときは、新しいことを試す必要はありません。なぜか何をやっても上手くいく状態なので、気持ちよく吹いてしまいがちです。
「どう演奏すると上手くいくのか」を知っておけば、スランプに悩んだとき、戻るべき奏法の指針ができます。
スランプから脱出するのも、1つの技術。ここで紹介している内容は、この技術を身に付けるための練習方法だと考えてほしい。
スランプ脱出の技術を持っておけば、本番でスランプになっても焦らない。
「調子の良い状態」と「調子の悪い状態(スランプ)」の間に、たくさんの「道」があるとイメージしてください。
目的地である「調子の良い状態」にたどり着くには、道順・行き方を知っておく必要があります。
「調子の良い状態」から出発しないと、正しい道順を知ることはできません。
スランプの時に何の手掛かりもなく、調子の良い状態に戻るのはかなり難しいので、逆の道順はないと考えてください。
4.実はスランプではなく、イメージと演奏技術の乖離
楽器の上達は大きく分けて、次の2つに大別されます。
- どのように演奏したいかイメージが湧く
- イメージを体現するために演奏技術を磨く
楽器を練習していると、演奏技術だけでなく、耳やイメージする力も向上します。
音楽をイメージする力が大きく向上し、今の演奏技術と乖離すると、自分が下手になったかのように錯覚します。
イメージする力は「良い音楽を聴く」ことで、演奏技術は「楽器の練習」で向上します。
そのため、イメージする力と演奏技術が比例して向上するわけでなく、一方が一気に伸びることがあります。
この錯覚状態は、スランプではなく、むしろ良い状態。向上したイメージに近づくよう、練習し、演奏技術の習得に努めるべき。
楽器の練習を頑張っている人が、「良い音楽を聴く」ことの重要性に目覚めると、この錯覚におちいりやすい。
イメージする力の重要性に関しては、次の記事でより詳しく解説しています。
>サックス・吹奏楽部員のための音色改善・イメージの重要性とセンスについて
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まとめ
この記事で紹介した、スランプへの対処法・考え方は、次の7つです。
- 正しい姿勢の口元にマウスピースが来るよう、ストラップの長さを調整
- リガチャーの位置を変えてみる
- ネックまでで奏法を確認
- 息を入れ過ぎていないか・深く息を吸えているか確認
- 舌の奥を上げて、口の中の容積が狭いアンブシュア
- 調子が良い状態の奏法を覚えておく
- 実はスランプではなく、イメージする力と演奏技術の乖離からくる錯覚もある
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