タンギングはサックスを始めて、すぐに習得できる技術ではありますが、タンギングの質は、音楽の印象を決める大きな要因となります。
ただ音を切るだけであれば、そこまで難易度が高い技術でないため、学びが疎かになってしまいがちです。
タンギングの世界は非常に奥深いです。入門書などに書かれた練習方法だけにとどまらず、より実践的な練習方法を解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
1.基本的なタンギングのやり方とコツ
音の出だしは、演奏の印象を大きく左右しますので、基本を正しく学ぶことは非常に重要です。
1-1.タンギングの仕組み
サックスは息を入れることで、リードが振動して音が出ます。
このリードの振動を舌で止めるのが、タンギングです。つまり舌でリードを止めさえすれば、息を入れたままでも音は出ます。
タンギングは、「舌だけ」で音を切る。
息やアンブシュアは、普通に吹いている状態と同じであるのが基本。
タンギングをするたびに、口や顎が動いてしまったり、息を入れ直してしまうのはNGです。
1-2.舌の使い方
舌の使い方は丁寧に理解してください。変な癖がついてしまうと、直すのに時間がかなりかかってしまいます。
発音方法
楽器を吹きながら、「Tu(トゥ)」と発音します。
そのときに舌がリードに触れて、リードの振動が止まり、音も止まります。
息は出しっぱなしでOKです。
発音方法は、「Lu(ル)」「Ta(タ)」などもありますが、「Tu(トゥ)」の発音の方が音を切りやすいです。
個人的には「Yu(ユ)」もオススメ。
舌の2種類の動き「つく」と「離す」
タンギングをするとき、舌は2つの動きをします。
- 舌をリードに「つける」動き…音が止まる
- 舌をリードから「離す」動き…音が出る
タンギングで音を切れるようになったら、この2つの動きを別々に考えることが大切です。
「Tu(トゥ)」などの発音を意識すると、舌を「つく」「離す」2つの動きが一瞬で行われるため、まとめて考えてしまいがち
次の楽譜で練習してみましょう。息は出しっぱなしで、舌だけで音を止めます。
真ん中の休符で、舌を「つく」動きと「離す」動きを分断していますので、それぞれ別の動きをしていることを確認しましょう。
舌の動かし方
どの発音であっても、次の2つのポイントを意識してタンギングします。
- 舌は小さく動かす
- 舌は前後に動かす(上下に動かさない)
速いタンギングをするときは、舌の動きが小さくなります。(動きが大きいと、速いタンギングになりません。)
しかし、ゆっくりなタンギングでは、舌の動きが大きくなりがちです。そうすると、タンギングに無駄が多くなります。
また、舌は前後に動かし、上下には動かしません。
上下に動かすと、口の中の容積が変わります。口の中の容積が変わると音程まで変わってしまうので、タンギングが汚くなりがちです。
発音の強弱
舌を「つく」力を強くするほどはっきりした発音に、弱くするほど柔らかい発音になります。
舌の力は非常に強いので、つく力を強くし過ぎないよう注意してください。舌でつく力が強すぎる場合、タンギングにノイズが入ることが多いです。
逆にタンギングが切れない人は、舌が上手くつけていません。後述する舌の位置を研究すると、上手く切れるようになることが多いです。
1-3.舌とリードが触れる位置
リードと舌の触れる面積はなるべく小さく、点と点でつくようイメージしてください。
舌の位置
舌の先端から1cmほど奥でタンギングするのが目安です。
ただしあくまで目安ですので、自分の舌の長さや口の形に合った、タンギングしやすい位置を研究することが重要になります。まれに舌の先端の方がタンギングしやすい、という方もいます。
舌が触れる位置について、自分の奏法をよく観察してみてください。自分が触れている位置よりもやや手前、もしくはやや奥にすると、タンギングの質が向上することがあります。
また、音域によっても舌のつく位置はごくごく微妙に変化しています。
低音域だとより奥に、高音域だとより手前でリードに触れることになります。
リードの位置
リードの先端、1点だけを狙います。
舌と異なり個人差はありませんので、自分が決めた舌の位置で、リードの先端を触れるようにしてください。
1-4.よくあるタンギングの悩みと解決策
タンギングの悩みで多いのが、次の2つです。
- タンギングが汚くなってしまう
- 速いタンギングができない
これらの悩みの原因は、「舌を動かし過ぎている」ことにあります。
極端に言えば、リードと舌が触れ、1mmでも離れれば良いので、舌を大きく動かすことは、無駄でしかありません。
舌の動きをコントロールすることは難しいので、アンブシュアから見直してしまうことをオススメします。
「口の中の容積が狭い」アンブシュアを作る。
口の中の容積が狭ければ、舌が動かせる範囲も小さくなります。
「口の中の容積が狭い」アンブシュアは、タンギング以外にもメリットがあります。詳しくは、こちらの記事にまとめています。
また、タンギングの基礎全般については、こちらの記事により詳しくまとめています。
>サックスのタンギング・発音のコツと教え方ー舌の位置と使い方
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2.タンギングの練習方法
具体的なタンギングの練習方法と、そのコツについて解説します。
2-1.舌だけを使う感覚を養う
前述したとおり、タンギングは舌だけ行います。(息やアンブシュアは、音を出しているときと変わりません。)
上の楽譜を演奏します。
下の楽譜は息の流れを表しています。(=ロングトーンと同じ息づかい)
2-2.速いタンギング対策
これ以降の練習も、練習①と同様、息づかいはロングトーンと同じように行います
舌の最高速度を上げる
テンポは♩=60〜120ほどで設定します。
確実にできるテンポから少しずつ速くしていきます。
舌の持久力をつける
1~2拍程度なら速いタンギングができても、それを持続することは難しいです。
速いタンギングを持続するための練習がこちらです。
次の2つのリズムパターンを練習しましょう。
できるようであれば、テンポを上げるだけでなく、30秒〜1分ほどこのリズムを繰り返してみましょう。
2-3.舌の動かし過ぎを防止する
舌の動かし過ぎを防止し、小さく動かす感覚を養うための練習です。
速いタンギングから練習するパターンです。
鏡を見ながら、練習します。
速いときの舌の動かし方で、遅い場合もタンギングする。
遅いタンギングをするときに、喉の近くが動いてしまう症状が出てしまう場合は要注意!
ここまで解説してきた内容を使って、私も克服できた。
2-4.指と舌がズレる場合の練習方法
タンギングのテンポに、指を合わせることを意識します。
タンギングは均等にリズムを刻みますが、指は音の並びによって簡単だったり難しかったりして、テンポが乱れてしまいがちだからです。
まずはゆっくりからスラーで演奏できているか確認した後、タンギングを入れてみてください。
2-5.音の出だし・発音練習
音の出だしを「タンギングのみ」で行うことが重要です。
アンブシュアを作る・息を入れるという工程は、タンギングをする前までに終わらせておくことが重要です。
タンギングの練習方法全般に関しては、こちらの記事にまとめています。
>サックスのタンギングのトレーニング・基礎練習方法(初心者〜中級者向け)
また、音の出だしに特化した内容は、こちらにまとめています。
2-6.タンギングの教本
タンギングだけに特化した練習が掲載されている教本は、おそらくこの1冊です。
メインは音階練習の教本ですが、タンギングの奏法についても解説があります。
特にタンギングを学び始めた初心者にとっては、効果的な練習方法が掲載されています。
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【応用編】特殊なタンギング
タンギングの特殊技法について解説します。
ダブルタンギング
通常のタンギングでは間に合わない、速いスピードでのタンギングが必要な時に使います。
ダブルタンギングの仕組み
舌をリードにつける→舌の位置を戻すという一連の動きで、舌の先と舌の奥の2回でリードにつくため、速いタンギングが可能になります。
シングルタンギング(通常のタンギング)では、舌をリードにつける→舌の位置を戻すという動きで、舌がリードにつくのは1回だけです。
ダブルタンギングは、「TuKuTuKu(トゥクトゥク)」と発音するのが一般的です。
「Tu(トゥ)」「Ku(ク)」の発音で、リードに触れる舌の位置が変わることがポイントです。
「Tu」…舌の先でリードについている(シングルタンギングとほぼ同じ位置)
「Ku」…舌の奥でリードについている
ダブルタンギング習得のコツ
シングルタンギングでは使わない「Ku」の発音がポイントです、
- リード・マウスピースの先端を狙って舌をつく
- 舌を張る
「Ku」の発音でも、確実にリードの振動を止めること
「Ku」の発音で音が切れない場合、舌が触れているリードの位置が悪い可能性があります。
また、舌を張ると、舌が硬くなるため、リードの振動を止めやすくなります。
マウスピースなしで、試してみてください。
- 舌の先端を下の歯と歯茎(はぐき)の間につける
- 舌の奥を上の歯と歯茎の間につける
- 舌を少し前に押し出す
ダブルタンギングについては、こちらの記事で更に詳しく解説しています。
>サックスのダブルタンギング~上手くできない理由と対処方法・コツを徹底解説
ハーフタンギング
ハーフタンギングは、特殊なタンギングではありますが、使用用途がかなり幅広いテクニックです。
ハーフタンギングとは
ハーフタンギングとは、リードと舌が触れた状態で音を出す演奏法です。
実際にはこのような音が鳴ります。(通常の奏法→ハーフタンギングを交互に演奏しています。)
しかし、使い方を覚えるとダブルタンギングやスラップタンギングなどの特殊なタンギングと比較して、圧倒的に使用頻度が高いです。
ハーフタンギングは超重要!
吹奏楽・クラシックのサックス奏者には、全員に習得してもらいたい。
ハーフタンギングの使用局面
- タンギングは必要(スラーがない)が、レガートで演奏したいフレーズ
- 跳躍の大きい音をつなげるスラーがあるフレーズ
①のように、タンギングしたくないけどタンギングしなくてはいけないフレーズ。
または②のようにタンギングしたいけどタンギングしてはいけないフレーズ。
この2つの局面で、ハーフタンギングは有効に使えます。
ハーフタンギング練習をするメリット
ハーフタンギングができると、通常のタンギングの質が向上します。
通常のタンギングは、ハーフタンギングよりほんの少しだけ、舌をリードに触れさせれば十分です。
舌のつき過ぎが、タンギングが汚い主な原因です。
舌の繊細なコントロールが必要なハーフタンギングの練習は、タンギングの質向上に大きく役立ちます。
ハーフタンギングについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
スラップタンギング
破裂音のような音で、現代音楽では多用されますが、楽譜に指示がない限り、使用しません。
タンギングをしたときに、ノイズが入ってしまう人の多くは、「スラップタンギングになってしまっている」状態です。
スラップタンギングができなくとも、仕組みを理解しておくことで、タンギングの質向上に役立ちます。
スラップタンギングの仕組み
- 舌をリードに密着させる(舌はリードと下唇の間に入るくらい・それ以外のアンブシュアは通常通り)
- 舌をリードから思い切り離す
①で、舌とリードを密着させることで、リードと舌の間に真空状態(=空間に何もない状態)を作り出します。
真空状態が作れると、舌をリードから離した瞬間に、リードが舌と同じ方向につられて動きます。
リードが元の形に戻ろうとしたとき、マウスピースを叩き(Slap)、音が出る仕組みです。
スラップタンギングの注意点
通常のタンギングとは、舌とリードのつき方が全く異なります。
- 通常のタンギング…舌とリードが「点と点」で接する
- スラップタンギング…舌とリードが「面と面」で接する
スラップタンギングの練習で、「面」でつく癖ができてしまうと、通常のタンギングでノイズが入りやすくなります。
逆に、通常のタンギングにノイズが入ってしまっている人は、きちんと「点」でつけているか確認しましょう。
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まとめ
サックスのタンギングの要点は、次の通りです。
- サックスのタンギングは「舌だけ」で行う
- 舌を「つく」動きと「離す」動きは別物
- 舌はなるべく小さく・前後に動かす
- ダブルタンギングは、「Ku」の発音でしっかりリードの振動を止める
- 使用頻度の高い、ハーフタンギングの習得は必須
- スラップタンギングの仕組みを理解して、ノイズが入らないようにする
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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