- 具体的にどのような吹き方をすれば、良い音色になるのか知りたい
- 「良い音色」とは、どういう音か分からない
実は、唯一無二の「良い音色」というものは存在しません。
なぜなら、演奏する曲やフレーズによって使うべき音色が変わるからです。
例えば、サックスの「良い音色」というと、華やかで響きの豊かな音色をイメージする場合が多いです。しかし、短調で書かれた悲しい曲を、華やかな音色で演奏しても、雰囲気が合わず曲の魅力を引き出せません。
私は、吹奏楽のCDを30枚以上レコーディングした実績があります。吹奏楽は多様なジャンルを取り扱うため、より多くの音色が必要になります。今回はそこで培ったノウハウを提供します。
この記事では、「良い音色」を自分の素の音である「中庸な音」と、「曲に合わせた音」の2つに分類し、それぞれの考え方や、具体的な練習方法を解説していきます。
この記事を読むと、良い音色を出すために取り組むべき具体的な練習方法が学べ、より魅力的な演奏を目指せます。ぜひ最後までお読みください。
①素の音である「中庸な音」を磨く。歌うときと同じ声帯の使い方をし、オーバートーン練習に取り組む。
②音色を変えるには、イメージが最重要。良い音楽を聴いて、イメージ力を磨く。
1.良い音色とは?~中庸な音と曲に合わせた音
音色を考えるには、2つの音色を理解する必要があります。「中庸な音」と「曲に合わせた音」の2種類です。
1-1.全ての基本となる「中庸な音」
「中庸な音」とは、それぞれの奏者自信の「素の音」のことです。ロングトーンなどの基礎練習でも、(無意識ではありますが、)この中庸な音を使っています。
中庸な音は、そこから音色を柔らかくも硬くもできるし、明るくも暗くもできる、中心のようなイメージです。
「中庸な音」という中心の音が決まっているからこそ、色々な音色が使いやすくなります。
また、楽器や部品(リガチャーやネジなど)の素材によって、中庸な音も変わってきます。
GL(ゴールドラッカー)の仕上げが、サックスでは一般的です。
例えば、GP(ゴールドプレート・金メッキ)仕上げは、GLの持つ音のベクトルはそのまま、より豊かで華やかな響きとなります。
一方で、PGP(ピンクゴールドプレート)は、GL・GPと比較し、素の音色が柔らかくなります。
個人的に、素材自体が音色の傾向を変えるのは好きではないので、GLやGPの仕上げのものを好んで使っています。
音色は、自分の奏法で変えていきたい。
1-2.曲に合わせた音色を出す
誤解されがちですが、どんな曲やフレーズでも使える「唯一無二の良い音色」は存在しません。
演奏する曲やフレーズによって、「良い音」は違う
前述した「中庸な音」から、曲やフレーズに合わせて、音色を変化させます。
中庸な音のクオリティが上がれば、変化させた音色のクオリティも上がります。
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2.良い「中庸な音」を出すヒント
まずは良い「中庸な音」を出すためのヒントを解説していきます。
中庸な音は、全ての音色の土台となるので、基本奏法を磨く必要があります。
2-1.歌ったときと同じ声帯の状態で演奏する
楽器を使う場合であっても、歌うときと同じく、身体全体を響かせる必要があります。
歌を歌うときの声の出し方と、普通には話すときの声の出し方(地声)で1番違うのは、声帯の状態です。
実際に歌を歌い、声帯の状態を確認してみてください。
歌っているときと同じ状態の声帯で、サックスを演奏する
声帯を歌うときと同じ状態とすることで、サックスの音色も歌声のようになります。
逆に声帯を使わずに演奏してしまうと、地声のような汚い音になってしまいがちです。
「喉を開く」ことが大事だからといって、無理やり喉を開こうとする
喉だけを無理やり開こうとすると、舌の奥が下がってしまい、アンブシュアを作るときの口の容積が広くなってしまいがちです。
サックスのアンブシュアは、口の中の容積は狭い方が有利です。息がまとまり、タンギングもしやすくなります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
>サックスのアンブシュア ~口の中と舌の位置、タンギングの苦手を無くす
また、喉を無理やり開くことで、力みにもつながります。
声楽からはたくさんの演奏のヒントを学ぶことができます。より深い内容はこちらの記事にまとめています。
>サックス・吹奏楽部員向け〜声楽から学ぶ音色・ピッチ改善・高音域の当て方
2-2.オーバートーンと同じ演奏方法(中級者以上向け)
オーバートーンが出せるようになると、音色や響きが劇的に向上します。オーバートーンを吹いているときと、同じ奏法で演奏することを目指します。
オーバートーン(倍音)とは、実際になっている音(基音)の中から、かすかに聴こえる高音のことです。
サックスでは次のように、最低音(シ♭)の運指でも、奏法やアンブシュアを変化させることで、かすかに聴こえる高音を強調して、基音のように聴こえさせることができます。
シやドの運指でも同様に、高音域を演奏することができます。
具体的には、次の練習を取り入れ、感覚をつかみます。楽譜の上段が出ている音程、下段が運指です。
通常の運指と低音域の運指を行き来しながら、同じ音程を出すことを目指します。
第2倍音
第2倍音(オクターブキー)
第3倍音
第4倍音
第5倍音
第6倍音
低音域の運指で吹いたときの感覚で、通常の運指でも演奏する
サックスは音が出やすいからこそ難しい
サックスは、音が出やすい楽器です。裏を返すと、明らかにおかしな奏法であっても音が出てしまいます。
他の楽器であれば、おかしな奏法では音が出ないので、奏法が間違っていていることに気付きやすいです。
サックスは音が出しやすいからこそ、良い音にたどり着く難しさがあります。
オーバートーンを鳴らすには、アンブシュアの柔軟性や息のコントロールが必要となり、非常に難しいです。
だからこそオーバートーンで吹くときの感覚で、通常の運指でも演奏できると、より洗練された音色を手にすることができます。
「オーバートーン練習」は「フラジオ練習の導入」と理解している人が多いですが、通常音域の音色を磨くためにも大変有効な練習方法なんですよ。
オーバートーンの出し方や取り組むメリットなど、こちらの記事でより詳しく解説しています。
>サックスのオーバートーン・倍音のコツ〜譜例あり!音色改善の練習法
2-3.自然に演奏して、良い音が出るセッティング
楽器本体・マウスピース・リード・リガチャーなどは、同じ型番・素材であっても、品質にバラツキがあるので、必ず選定したものを使いましょう。
ビリビリと雑音が入る状態は、奏法の問題というよりは、楽器や道具の問題であることも多いです。
選定をするときのポイントは、道具ごとに良い音を探すのではなく、自分が普通に演奏して、結果的に良い音が出たものを選ぶのが重要です。
道具を自分に合わせる必要はありません。
選定するときは、自分が自然に演奏して、良い音色・吹奏感であるものを選ぶ
但し、音色だけを優先して、道具を選ぶのはNGです。
例えば、必要以上に硬い番手のリードを使用している奏者はよく見かけます。
確かにリードが硬い方が、音色は太くなり、響きは増す傾向はあります。
しかし、音を出す(特に発音部分)が難しくなってしまう、音色の変化をつけにくい、などの弊害が出やすいです。
個人的には、「反応が速い・息がすぐ音になる」ということを1番に重視。
その中で、良い音色が出るものを選んでいます。
選定品リード販売のお知らせ
音色・演奏に大きな影響を与えるリードですが、一般的に、楽器やマウスピースのような選定品は販売されていません。
良いリードを良い演奏に直結します。また、良いリードを知らないと、良いリードを選ぶ技術も身に付きません。
詳細は以下のリンクを参考にしてください。
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3.曲に合わせた音を出すヒント
ここからは、中庸な音から、曲に合わせた音に変化させるヒントを解説していきます。
3-1.良い音楽を聴いてイメージ力を鍛える
イメージできない音は、どんなに技術があっても出すことができません。(もちろん技術がなければ、イメージした音は出せませんが…)
イメージは、演奏技術と比べて軽視されがちですが、イメージと技術は車の両輪のようなもので、どちらも大変重要です。
イメージ力を上げる唯一無二の方法は、「良い音楽を聴く」ことです。
良い音楽を繰り返し聴くと、自分の好きな部分が頭に残り、演奏パターンが記憶されます。
自分が無意識に覚えた、演奏パターンというのは、「自分の好み」であり、他人とは違います。
他の人の音楽を聴いたからといって、真似にはなりません。「自分が好きで、無意識に記憶できたもの」だけ演奏に反映されるため、より自分らしさが磨かれるのです。
イメージできない音は、演奏できないので、まずはイメージ力を鍛えるのが最重要
イメージの重要性や上達のために効果的な音楽の聴き方は、こちらの記事でより詳細に解説しています
>サックス・吹奏楽部員のための音色改善・イメージの重要性とセンスについて
3-2.音色を変えるヒントは、「息づかい」と「発音」
音色を変化させる方法について、解説していきます。
息づかいを微妙に変化させる
音色の変化にダイレクトに影響するのは、息づかいです。
中庸な音の吹き方から、ごくごくわずかに息づかいを変化させます。変化させるのは、次のような内容です。
- 息のスピード
- 息の方向
- 息の太さ
息づかいを変えた時に、音色にどう変化するかをよく観察し、傾向を覚える
イメージ通りの音色になるように、様々な息づかいを試す
例えば、息のスピードを緩めると柔らかい音になりやすいです。
1番よく鳴るポイントに当たるよう、息の方向を決めがちですが、そのポイントからあえて外すことで、うつろな音を表現できることもあります。
音色の変化を重点的に練習したい場合、シンプルなメロディを演奏するのが効果的です。難易度が高い曲で取り組んでしまうと、音色以外で技術的に気にすべきポイントが多くなるからです。
サックスの場合は、ラクールの練習曲で取り組むのがベターです。
なお、「中庸な音」・「音色の変化」両方で使える呼吸法の基礎については、こちらの記事で解説しています。
発音(=音の出だし)で、音楽の印象を決める
発音(=音の出だし)は音楽の印象を大きく左右します。
音を録音して、音の始まりを切り取る編集をすると、何の楽器を演奏しているのか分からなくなります。
サックスの発音を美しくするためのコツは、「音を出す瞬間、舌だけを使う」ことです。
音を立ち上がる瞬間に、次の3つの行為を(ほぼ)同時に行う。
- アンブシュアを作る
- 楽器に息を入れる
- タンギングをする
次の手順で発音するのが基本です。①~③は音を出す前の準備です。
- アンブシュアを作る
- タンギングをした瞬間と同じように、リードと舌を触れた状態にする
- 息を吹き込む
- 音を出す瞬間に、舌を離す
楽器を鳴らすために必要な息の量が少ない(or 多すぎる)、または舌を離す力が強すぎると上手くいきません。
サックスは発音がきつくなりがちなので、この方法を試してみてください。
もちろん演奏するフレーズによっては、強めの発音が必要になりますし、音色と同じく、唯一無二の発音方法があるわけではないですが、基本の発音方法としておさえるべきポイントです。
サックスの発音について、より詳細な内容に関しては、こちらで解説しています。
3-3.音色以外で表現力を上げるヒント
「バージェスのサックス塾」では、音色以外にも、曲の表現力を上げるための多数のヒントを解説しています。
ビブラート
良い音楽表現には、ビブラートも重要です。ビブラートを「かける or かけない」ではなく、どのようなビブラートをかけるべきかのヒントを解説しています。
>サックスのビブラート〜表情豊かな演奏にするためのかけ方とコツ
楽譜を深く読む
楽譜を正しく・深く読めるようになると、自然な音楽表現ができるようになります。
>サックス・楽器演奏の歌い方と表現力~良い演奏の大前提と具体的なテク
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まとめ
- 音色は大きく分けて「中庸な音」と「曲に合わせた音」の2種類
- 中庸な音は基本奏法(声帯の使い方やオーバートーンなど)で向上させる
- 曲に合わせた音は、良い曲を聴くことで、自分のイメージ力を上げるのが最重要
「サックスの音色」にフォーカスして解説をしました。音色はもちろん重要ですが、音色だけを意識しすぎて、他の要素がおろそかにならないよう注意してください。
「良い演奏」をすることが第一であり、「良い音色」はそのためのツールに過ぎません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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